16日の5月臨時議会では、今年4月1日施行の政令改定を受けて今年度の国保税の限度額を医療分で1万円、後期医療支援分で2万円、合計3万円値上げして109万円とした専決処分(※)の撤回と高すぎる国保税の引き下げを要求。さらに国保税の納期を今の8回から12回に増やし払いやすくすることも求めました。
しかし健康医療部長も市長も、限度額値上げとともに法定軽減の対象要件が拡大されているとして、将来的な中間所得層の負担軽減のためには限度額の値上げが必要と答弁。国保税引き下げに市長は、県内で国保税を統一する計画があるとして太田市だけが引き下げることはできないと答えました。
納期を増やすことには健康医療部長も市長も、引き続き検討するという答弁にとどまりました。
質問では埼玉県越谷市のように、せめて限度額値上げを4月1日施行の政令改定より1年遅らせることも要求。しかし市長は「遅らせる」とは答えませんでした。
限度額値上げは4年連続
国保税の限度額値上げは今回で4年連続。介護保険施行前の1999年度の国保税は医療分だけで、限度額は53万円でしたが、00年度の介護保険施行で国保税は医療分と介護分の2本立てに。限度額は医療分53万円に介護分7万円が加わり合計60万円になりました。今年度の限度額は26年前の99年度の2倍を超えることになります。
今回の値上げで国保税の限度額は、医療分が65万円から66万円に、後期医療支援分は24万円から26万円になります。介護分は17万円のまま据え置かれます。
法定軽減の拡大による負担軽減は148世帯に790万円だけ
今回の法定軽減の拡大によって負担が軽減されるのは、わずか148世帯で軽減総額は790万円(2025年2月ベースでの比較)にしかすぎないことも質問で指摘しました。
負担は社保の2.5倍
質問ではさらに、今回の限度額値上げを50代夫婦と高校生、中学生、小学生の子ども3人の5人家族でみた影響の試算も指摘しました。
事業所得731万2,000円までは値上げとはなりませんが、その世帯で事業所得731万2,000円だと国保税は104万円。協会けんぽなら同じ年収だと保険料は41万5,322円です。
同じ世帯で事業所得773万7,000円では2万円値上げで国保税は108万円。協会けんぽなら同じ年収だと保険料は43万9,462円です。
やはり同じ世帯で事業所得809万9,000円から国保税は今回値上げされた限度額109万円となり3万円の値上げ。協会けんぽなら年収809万9,000円の保険料は46万23円です。
国保税が社会保険の2.5倍もの重い負担ということがわかります。
〝金持ち〟と言えない世帯に値上げ
質問で試算を示した世帯の事業での元金返済が仮に300万円なら、実質所得は400万円から500万円。「私立大学に入りアパートを借りれば4年間で1,000万円」という話はよく聞きます。子ども3人の5人家族で住宅ローンや教育費まで考えれば、実質所得で400万円から500万円はけっして〝金持ち〟とはいえません。
まして今は、物価高に追いつかないとはいえ最低賃金も上がっています。少しでも楽になりたいと事業で頑張り所得が増えても、元々高すぎる国保税の限度額の毎年の値上げが、暮らしも商売も追い詰める現状はこのままにはできません。
そもそも高すぎる国保税 社保の3倍の負担
質問ではさらに、今回の限度額値上げの影響は受けないものの、社会保険の3倍近い負担となっている高すぎる国保税の実態がわかる試算も示しました。
所得300万円の3人家族
事業所得300万円、40代の夫婦と小学生の子ども1人の3人家族の国保税は46万6,300円。2016年度から今年度までの10年間で2万1,000円の値上げです。
協会けんぽなら同じ年収だと保険料は17万400円。負担は社会保険の2.74倍にもなります。
所得400万円の4人家族
事業所得400万円、40代の夫婦と中学生、小学生の子ども2人の4人家族の国保税は61万8,900円。2016年度から今年度までの10年間で2万9,600円値上げされています。
協会けんぽなら同じ年収だと保険料は22万7,200円。負担は社会保険の2.72倍にもなります。
所得500万円の5人家族
所得500万円、50代の夫婦と高校生、中学生、小学生の子ども3人の5人家族の国保税は77万1,500円。2016年度から今年度までの10年間で3万8,200円の値上げとなります。
協会けんぽなら同じ年収だと保険料は28万4,000円。負担は社会保険の2.72倍にもなります。
20万円の家計なら月160円で引き下げ可能
財調は合併した20年前の3.2倍 158億円
質問では、なんにでも自由に使える市の貯金である財政調整基金が合併した20年前の3.2倍、158億円にも膨らんでいることを強調しました。
さらに、例えば1世帯3,000円の国保税引き下げに必要な予算は8,000万円ほどで一般会計予算998億円の0.08%であることを指摘。20万円の家計に例えれば、月160円のやりくりで1世帯3,000円の国保税引き下げが可能と強調しました。
また社会保険の2.5倍から3倍近い負担の重い国保税の引き下げへの税金投入に反対する人がいるとは考えられないこと、誰もが必ず加入することになるのが国民健康保険さあることも指摘しながら引き下げを求めました。
しかし市長は、県内で国保税を統一する計画があるとして太田市だけが引き下げることはできないという答弁を繰り返すだけでした。
国庫負担削減が原因
1961年の国民皆保険開始当初は、全市町村国保の予算の約半分は国庫負担。ところが今の国庫負担は3割程度。これが相次ぐ国保税値上げの原因です。日本共産党は1兆円の国費投入増で協会健保並みの引き下げを要求。全国知事会・市長会なども要求しています。
質問では、国にも県にも財政負担の増額を求めながら、それが実現するまでは市の財政投入で国保税を引き下げるよう求めました。しかしそれでも市長の答弁は変わりませんでした。
専決処分
議会に議案を出す時間がない時などに、市長など首長が地方自治法に基づき、議会に議案を出さずに決定する処分。今回の国保税限度額引き上げは、3月市議会の閉会後に国が地方税法施行令を改定したことを受けての専決処分。
資料



●国保税 限度額値上げの推移
●国保税 限度額値上げ 協会けんぽとの比較
●国保税の推移 協会けんぽとの比較
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