28日 7月臨時議会-太田市救命救急センター 建設委託を可決 2012年4月開設へ

建設委託費43億円 富士重工健保組合に

太田市救命救急センターの開設に向けて、市内で総合太田病院を経営する富士重工業健保組合に建設費43億円で委託するための議案が28日、7月臨時市議会本会議で全員賛成で可決されました。

建設工事の期間は今月29日から2012年3月末まで、開設は2012年4月とされます。

補助金は追加なし

救命救急センターの建設は、総合太田病院の移転新築と一体に行われます。
私は採決に先立つ本会議の質疑で、同病院の移転新築事業費の総額とあわせて、今回の建設委託費43億円のほかに、同病院の移転新築に関連して市が交付する補助金の有無や、救命救急センター完成後の同病院への市の補助金について、現行の補助額も含めて確認。

馬場克己市健康医療部長は、移転新築事業費は約155億円であり、このうち43億円を交付する建設委託費のほかに移転新築に関連して予定する補助金はないと答えました。

また同病院への今年度の補助金は、他の救急病院への運営補助と同様の算定による救急対応にたいする輪番制運営補助金が1億700万円、市内で同病院のみが設置する小児救急医療センター運営補助金が2,000万円、やはり同病院にのみ交付する基幹病院運営補助金が7,500万円で、合計2億200万円であると答弁。

救命救急センター完成後は、輪番制運営補助は現行どおり継続を考えているものの、その他の補助金は、将来、削減も含めて見直しもあると答えました。

なお市の建設委託費とは別に見込まれる国・県の補助金は、最大で29億1,000万円とされるものの、現在までに補助額は確定していません。

建設業者は8月上旬に決定
公共事業でありながら
業者選定に市は関与できず


今回の建設委託は、富士重工健保組合に一括委任とされ、建設業者も8月上旬に同健保組合が選定することになります。

事実上の公共事業でありながら、市は建設業者の選定にかかわることができません。

建設業者には、過去の工事実績も含めて、安全性・耐震性・耐久性など多面的な角度から信頼性が問われます。

しかし、同健保組合にすべて一括委任では、税金から支出・交付する建設委託費43億円の妥当性も含めて検証できるのは、建設工事の完了後になってしまいます。
こうした委託の手法には問題が残ります。

質疑でその問題を指摘した私に市長は、同健保組合には、43億円を市民の税金から交付することの重要性・重みを認識して、建設工事や完成後の運営に取り組んでもらうよう、市としての意見も強く伝えていきたいと答えるにとどまり、こうした一括委任の手法を今後見直すことは明言を避けました。

なお、完成後の救命救急センターの運営は、同健保組合に指定管理委託し、市は管理運営委託費は支払わず、同健保組合が通常の医療機関と同様に経営するとされます。
太田市が救急病院経営のノウハウを蓄積していないこと、同病院に管理運営委託費を支払うことはしないとされることから、やむをえないものとして、私はその指定管理委託には反対はしませんでした。

医師・看護師の確保 現段階でメドたたず

私は救命救急センターの医療スタッフの確保の問題にも言及。
配置計画と完成までに医師・看護師・各種検査技師などを確保できるメドがたっているのかを、同病院の移転新築後の診療体制とあわせてただしました。

馬場市健康医療部長は、新総合太田病院の診療科目は、現在の20科目に、救急科、新生児科の新科目が加わり、29科目になると答弁。

救命救急センターについては、救急科が担うこととあわせて、必要な人員要件として、日本救急医学会指定医等の救急医療に精通している医師1人とその他の医師7人、専任の看護師ほか医療スタッフ30人が必要となることも明らかにしました。

しかし医療スタッフの確保については、「必要な人員の確保が進められているものと聞いております」としながら、「一日も早く、要件どおりの人員配置ができますよう働きかけてまいりたい」と答弁。

現段階で、医師・看護師など必要な人員確保のメドはたっていないことが明らかになりました。

私は、建物・施設をつくっても、肝心かなめの医師・看護師など医療スタッフが確保されなければ、43億円という建設委託費が生かされないとして、人材確保にどう取り組むのか、これまでの経緯も含めて市長の考えをただしました。

市長は、「どこの病院も医師・看護師の確保には苦労している」とし、「太田病院には、市民の税金を使うことの重要性を認識してもらい、腹をくくってとりくんでもらうよう、そのために市も必要な意見を言いながら働きかけを強める」と答えました。

今回の救命救急センターの建設は、最重要課題のひとつである人材確保をどうはかるかという点で、それが担保されない現段階で建設に着手するという点が問題になります。

しかし一方で、高度救急医療施設の整備やハイリスク(危険度の高い)分娩にも対応できる新生児を対象とする救命救急センターの設置を求める
市民要望の高まりという現実もあります。

ハコはできても機能できず、機能を生かせないという事態は、絶対にあってはなりません。
現段階で不確定な要素はありますが、市民要望の実現に向けての取り組みとして、私は今回の議案には賛成しました。

総合太田病院を経営する同健保組合の責任は重大です。同健保組合がその責任をしっかり果たすよう、太田市が責任を果たすことが求められます。

もちろん、議案に賛成した私の責任も同じように重大です。
市民要望の実現に向けて、そして43億円の税金が生かされるために、私も知恵をしぼって力をつくします。

地域医療体制の整備
救命救急センターだけでは全体の底上げ・充実にはつながらない

この地域の中核・基幹病院である総合太田病院の機能が強化されても、救命救急センターがつくられても、それだけでは、この地域の医療体制全体の底上げ・整備・充実にはつながりません。

他の医療機関への支援も強めることが求められます。
市長もかねてから、かかりつけ医、主治医をもつことの重要性を呼びかけてきました。
しかし、この間の政府の医療改悪の影響を受けて、受診抑制や医師・看護師不足などによる診療報酬の減収と、それにともなう経営上の困難を余儀なくされている医療機関もあります。

最近でも、病院から有床(ベッドのある)診療所へと移行せざるをえなかった病院もあるほどです。

こうした地域の病院・医院・診療所にたいして、人材確保や施設・設備・医療機器を対象とした財政支援も含めた手立てをはかることも、救命救急センターの建設と同じように重要です。

私はそうした問題も指摘しましたが、市長は、「かかりつけ医は大切」としながらも、「今後は救急病院を中心として重点的な(予算)配備をはかる」という答弁にとどまりました。

また、「子育てや老後の暮らしに魅力があるまちづくりををすすめる」として、「そうした魅力のあるまちに、太田出身の医師が戻ってくると思う」と市長の希望的観測は示されましたが、具体的に市内の医療機関の医師・看護師の確保や施設整備への財政支援については明言を避けました。

いくら中核・基幹病院といっても、太田病院だけを特別扱いするかのような疑問を持たれかねないやり方ではなく、市内の医療機関全体の底上げにつながる全体を見据えた支援が求められます。

なお、43億円の建設委託費のうち95%は、元利償還の70%を普通交付税の基準財政需要額に算入できる合併特例債で、残りの5%は市民公募債で調達するとされます。
総合太田病院の移転新築費用は、総事業費(建設費)155億円のうち43億円を救命救急センター建設委託費として市が交付、国・県補助金が最大で29億1,000万円、残りが同病院を経営する富士重工健保組合の負担とされます。

用地取得費9億円

同病院の移転新築にともなう用地造成取得費は約9億円とされます。
このうち用地取得費は約6億7,000万円、造成・調査費が約2億円、登録など諸費用が約3,000万円とされ、その全額が同健保組合の負担とされます。

なお用地取得では、市土地開発公社があっせん・協力しています。

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