9月議会では太田市の2012年度決算が審議され、一般会計と国民健康保険、住宅新築資金貸付、後期高齢医療、八王子山墓園、介護保険、藪塚老人保健施設の6つの特別会計、水道、下水道の2つの事業会計の決算が可決されました。
太田市の決算は、一言でいうなら、市民サービス後退と負担増を行いながら、基金(家庭でいえば貯金)を増やした決算といえます。
さらに気になるのは、9月議会最終日の市長の議会閉会にあたってのあいさつの中での言葉です。
市長はあいさつの中で、今後のまちづくりのフレームとして、①工業団地の造成、②太田駅北口と南口の開発、③水道事業の広域化――の3点を示しました。
①は国道50号線沿いの50haあまりを工業団地として造成するという計画です。日本共産党市議団は、工業団地の造成に機械的に反対するものではありませんが、現段階では売れる見込みも不明確。概算の総事業費も示されないままです。
②についても、党市議団は、太田駅周辺での市民が集える場の整備には反対するものではありません。しかし市長がカフェや図書館、美術ホールと呼ぶ公共施設が、具体的にどんな規模で、どれだけの事業費を投入してつくられようとしているのか、民間開発のための環境整備と市長が呼ぶものが、一体どんな規模と内容をもつものなのか、いまだに具体的には示されません。
③についても、党市議団は、水道事業の広域化に機械的に反対するものではありません。しかし広域化には、太田市による民間業者への包括業務委託が導入されるものという不安がつきまといます。市長は、広域化によって、できることなら水道料金の引き下げも行いたいといいます。しかし、それが本当に現実的に具体性をもつものなのか、広域化を協議中の自治体間では、水道料金も施設・設備の更新や借金残高も様々。広域化が関係自治体の住民すべてに利益をもたらすものとなりうるのかどうか、なにより太田市民にとって利益をもたらすのかどうか、その保証はどこにあるのか、合併のときのように「こんなはずではなかった」ということにはならないのかどうか…慎重に検討しなければならない課題がたくさんあると考えずにはいられません。
ここ数年はおさまっていた、不要・不急の大型・開発型公共事業の再来とはならないのか、こう考えるのは、私が心配しすぎているだけなのでしょうか。
ただの杞憂なら、それにこしたことはないのですが、それでも心配はつきません。
ともかく、9月議会で可決された決算の問題をお伝えします。
一般会計と6つの特別会計の決算は歳入総額が1107億円、歳出総額は1074億円、歳入歳出の差引総額は33億円(いずれも1億円未満を四捨五入)。水道事業会計(収益的収支)の決算は収入が44億9千万円(前年度繰越利益剰余金を含む)、支出が41億3千万円、収入支出の差引額は3億6千万円となり、下水道事業会計(収益的収支)の決算は収入が18億6千万円、支出が29億7千万円、収入支出の差引額はマイナス11億1千万円(いずれも1千万円未満を四捨五入)。下水道事業会計の収支の欠損(マイナス)分は、12年度の下水道事業会計資本剰余金から補てんすることが可決されました。
日本共産党市議団は、一般会計、後期高齢医療、介護保険、水道の各会計決算にたいして、渋沢ゆきこ議員が決算委員会で、私が本会議で討論を行い、反対(いずれも日本共産党以外の賛成により可決)。その他の決算には賛成(いずれも賛成全員で可決)しました。
党市議団が賛成した決算のうち、住宅新築資金貸付、八王子山墓園、藪塚老人保健施設の各会計はとくに問題のないものです。
国保会計
1世帯平均1万2千円引き下げ
保険証取り上げも半減
国民健康保険会計決算は、12年度からの国民健康保険税の1世帯平均1万2千円引き下げを前提としたもので、保険証の取り上げ(資格者証の発行)も13年4月1日現在で約1千人と12年4月1日現在との対比でおおむね半減しており、一定の前進が見られたことを評価し賛成しました。
下水道会計
下水道整備を拡大
負担軽減も図りながら
下水道会計決算は、懸案だった地域での下水道整備の思いきった拡大に12年度から着手し、住民負担の軽減も図られていることから賛成しました。
渋沢議員が決算委員会の審議や討論で、私が本会議の討論で指摘した決算の特徴や問題点は次のとおりです。
市民税増税
12年度決算の個人市民税は5億3千万円あまり増(前年度対比)。民主党政権が子ども手当の財源づくりとして行った、年少扶養控除の縮小・廃止や、東日本大震災の復興財源づくりを名目とした市民税増税による影響と言えます。
当初予算段階では、年少扶養控除の縮小・廃止による市民税増税の影響を受ける人は28,000人、その増税額は5億5,000万円とされ、大震災の復興財源づくりを名目とした市民税増税は10万5,000人を対象として、その増税額は5,000万円あまりとされていました。
経済危機・デフレ不況のもとで苦しむ市民、とりわけ子育て世代を中心に、増税によって集めた税金の市民への還元の仕方が鋭く問われます。
人件費削減
マイナス人勧実施
退職手当削減
12年度は、11年12月議会でのマイナス人勧の完全実施の議決や、12年3月議会で可決された職員の特殊勤務手当の廃止、職員削減などにより、職員給与費を大幅削減。さらに12年12月議会では、職員の退職手当を12年度から3年間で段階的に削減し、平均で383万円削減、総額2億2千万円を削減(ともに14年度の最終削減額)する議案まで可決し、それらを反映した決算となりました。
こうした給与や退職手当の削減は、職員の生活設計を大きく狂わせるとともに、この地域の民間の賃金水準を下落させ、地域経済にも大きな打撃を与えます。
さらに民間委託や低賃金の非正規職員を増やしながら正規職員の削減も続行。市民サービスの後退にもつながる問題です。
歳入
GKAに地代減免を継続
歳入では、私立学校である群馬国際アカデミー(GKA)への市有地貸付料の減免も継続。GKAから徴収する市有地貸付料(地代)は、11年度に続き700万円を減免し約800万円とされています。
歳出
おうかがい市バスは一定の改善
求められる路線バスの充実
歳出では、おうかがい市バスで一定の改善がありましたが、よりきめ細かい循環型路線バスの運行や、民間タクシー業者による福祉車両での旅客運送、NPOによる低料金の福祉有償運送の充実に向けた助成制度の創設、タクシー券の拡大という点では、課題を残したままです。
尾島生きがいセンターを廃止
地域のとりわけ高齢者のよりどころである健康と福祉の増進、疾病・介護予防に寄与する施設である、尾島生きがいセンターを廃止しました。
高齢者への
肺炎球菌ワクチン助成を早期に
予防医療の充実として、医療費節減を強めるためにも有効である、高齢者の肺炎球菌ワクチンへの助成はいまだに実施されず、早期の助成制度創設が求められます。
住宅リフォーム支援事業を廃止
市長も経済波及効果が高いと認めているにも関わらず、11年度に創設した住宅リフォーム支援事業は12年度に廃止。13年度に再開されたものの、14年度の廃止をすでに決定しています。制度の恒久化が求められます。
安全・安心のまちづくりという点では、住宅の耐震改修補助の思いきった拡大も求められます。
市営住宅退去時の原状回復費用
一定の前進はあるものの…
12年度からは、市営住宅の退去時の原状回復費用の一部を軽減。しかし課題も残ります。
11年度までは市営住宅の退去時には、天井や壁紙、ふすま、障子、畳を退去者負担で新品に交換しなければなりませんでしたが、12年度からは、退去時には県営住宅と同様に、天井や壁紙は市負担での交換となりました。
県営住宅では、入居時に畳が新品に交換されていなかった部屋の場合、退去時の畳の交換には補助金が出ます。
公営住宅の退去時の原状回復費用について、経年劣化によるものは自治体負担とする国土交通省のガイドラインを考えても、天井や壁紙、ふすま、障子、畳など経年劣化によるものは市負担での交換とすることが求められます。
沢野小学校
移転新築工事に着手
12年度は、沢野小学校の移転新築工事に着手したことも含め、学校耐震化事業をさらに推進したことは大いに評価できます。
しかし13年度に実現したとはいえ、学校の全教室へのエアコン設置が13年度まで見送られたことは、不十分さが残ります。
OICTの地代は300万円のまま
株式会社である太田国際貨物ターミナル(OICT)には、10年度の4億8千万円、11年度の1億円に続いて、12年度も1億円の補助金を交付。OICTのほとんどの建屋が市有地に建てられているにも関わらず、地代は年間わずか300万円とされ、その地代を徴収する市有地が一部に限られていることは改善が求められます。
基金を58億円に増やしながら
負担増とサービス後退
太田市は財政的に十分体力があり、最近では、明確な不要不急の大型公共事業もなくなり、さらには、臨時財政対策債という交付税の代替、つまり実質の交付税である借金を除けば、借金の残高も年々減少しています。
財政調整基金も決算後は2億円を積みまし57億8千万円あまりに。市長も「基金は貯めることが目的ではな
い」として、「市民のために使うことを考えている」と9月議会で答弁していることには期待がもてます。
しかし市民生活と中小業者の経営を守る手立てを強める点では、不十分さを残した決算と言えます。
後期高齢者医療会計
県単位で広域運営される後期高齢者医療制度は12年度に保険料を値上。軽減措置があるとはいえ、保険料値上げのもとで、市単独での負担軽減や予防医療も含め必要な医療を保障する手立てが求められます。しかし12年度もそうした手立ては取られないままでした。
介護保険会計
基準額を年4,800円値上げ
特養ホームの入所待機者が昨年5月1日時点で731人と、前年同時期の768人より38人の解消が図られたことは評価できます。
しかし保険料の基準額を年4,800円値上げしたもとで、本市独自の減免が適用された人は、保険料で1人、減免額で2万7千900円、利用料でも7人、減免額で78万円ほどにとどまりました。負担軽減策の拡充が求められます。
水道事業会計
12年度は水道事業の包括業務委託7年目。水道事業の運営責任が自治体にあることを考えても、民間任せにせず、市の管理体制を強めることが求められており、年々減少する技術者の増員を図ることも含め、市による直営に戻すことが求められます。
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