介護保険と生活保護の矛盾(2)-保護費で入所費用が払えない
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一昨年から今年にかけて関わった相談のなかで、介護保険と生活保護という二つの制度の矛盾と問題に向き合うことになった事例が複数あります。
※前の記事の続きです。
深刻化する
生活困窮と介護難民
いま市内でも、生活困窮から生活保護を受ける人が増え続けています。
最近の特徴としては、30代、40代、50代の現役世代が生活保護を受けることがあげられます。長期化・深刻化する雇用悪化が原因です。
一方、高齢で無年金あるいは低年金、そして身寄りがない、または家族による経済的援助も不可能な人の生活保護もあとをたちません。
こうした高齢者のなかには、在宅介護では生活が成り立たず、特別養護老人ホーム(特養)に申し込んでも入所できないという人も少なくありません。
家族が在宅で介護できればまだいいのですが、経済的援助ができないということは家族自身の生活も大変だということです。
高齢者を家族が介護するためには、仕事をやめなければならないこともあります。しかしそれでは、家族の生活が成り立ちません。
どんなに必要かつ切実でも特養に入所できない高齢者。こうした人たちが入所可能な施設がグループホームといわれる施設です。
しかし生活保護が必要な人がグループホームに入所するには、介護保険と生活保護の二つの制度の矛盾とぶつかります。
グループホーム
生活保護では
入所費用が払えない
介護保険法では、介護施設とされるのは前述の特養、老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設の3施設だけです。
一般にグループホームといわれる施設は、介護保険法でいう介護施設とはなっていません。
生活保護を受けている人が、特養、老健、介護療養型医療施設など介護保険法で定められた介護施設に入所する場合は、食費、居住費も含めて自己負担費用を生活保護費で払っても、ご本人の手元に一定額が残ります。
逆に言えば、払える額が生活保護費として支給される、あるいは、生活保護費で払える自己負担額となっているということになります。
しかし生活保護を受けている人がグループホームに入所すると、その自己負担費用を生活保護費で払いきれないことも少なくありません。
なぜ、こういうことが起こるのかというと、グループホームは法律上の“介護施設”ではなく、ほとんどのグループホームでは、自己負担費用が十数万円にもなるからです。
特養など“介護施設”は、法律にもとづいて全国一律で所得によって自己負担額が決められています。
しかしグループホームは法律上の“介護施設”ではないので、法律で決められているのは、施設内で受ける生活介助、リハビリなどの介護サービス利用料の自己負担額だけ
です。
そのほかの家賃、食費、水光熱費、共益費、ベッドなど寝具のリース代などは、介護保険の給付(保険負担)の対象外とされ、実費負担となります。
このほかにグループホームによっては、カーテンのリース代まで実費を払わなければならないところもあります。
さらに理髪・美容代、個人的な外出にかかる送迎費、貴重品の管理手数料もかかります。
そしてこのほかにも、日用品代、小遣いなどが必要になります。
結局、グループホームごとの介護体制(施設面・人員体制など)によって、自己負担額が変わることになります。
介護保険の利用料とこれらを合計すると、毎月十数万円を自己負担することになります。
介護保険の利用料は生活保護費から支給されるとはいえ、毎月合計で十数万円の自己負担は、結局生活保護費では払いきれないことが多いのが現状です。
一方、生活保護では、グループホームへの入所は“在宅”での生活保護という扱いとなります。
“在宅”での生活保護ということは、毎月支給される生活保護費は基本的には(家賃+生活費=約96,000円)(太田市・家賃30,000円の場合)(注~地域ごとに保護費の額が決まっています)+(介護保険料+サービス費用)ということになります。
ある社会福祉法人(県外)が経営するグループホームの自己負担額は次のようになりますが、県内・市内でもほぼ同様と言われます。
①家賃(1カ月あたり)
30,000円
②食材費(1日あたり)
30,000円(1,000円×30日)
③水道光熱費(1カ月あたり)
15,000円
④共益費(1カ月あたり)
5,000円
合計
80,000円
ここまでで合計80,000円ですから、96,000円(太田市・家賃30,000円の場合の生活保護費)-80,000円(介護保険以外の自己負担)=16,000円となります。
このグループホームでは、さらに次のような費用がかかりますが、やはり県内・市内でもほぼ同様と言われています。
⑤ベッド、寝具のリース代
実費
⑥カーテンのリース代
実費
⑦理髪・美容
実費
⑧おむつ代
実費
⑨個人的な外出にかかる送迎費等
要した費用の実費
⑩貴重品の管理
希望により利用。
○利用料金(1カ月あたり)
1,500円
⑪レクリエーション活動
希望により参加。
○利用料金
実費
結局、生活保護費で費用を払えない事態が起こってしまうことがあります。
介護付高齢者賃貸住宅といわれる施設でも、自己負担額はグループホームと同様になるといわれています。
単身者の場合なら、最低限の費用は生活保護費でなんとか払うことができます。しかしそれでも、ベッド、寝具のリース代あるいはクリーニング代、おむつ代など諸費用が不足すると言われます。
そしてさらに問題となるのは、夫婦二人で介護付高齢者賃貸住宅に入所した場合です。
太田市で家賃が30,000円の場合、単身者なら生活保護費は毎月約96,000円支給されますが、夫婦二人の場合は毎月の生活保護費は約120,000円となります。
これでは、家賃、食費、水光熱費、共益費などの二人分の最低限の費用とされる約160,000円を払うことができません。
最近私が関わった相談が、まさにこうした事例でした。
私が最近関わったご夫婦の場合は、娘さんが施設(介護保険法でいう“介護施設”ではありません)の費用の不足分を援助しようと思っても、生活保護では娘さんの援助はご夫婦の収入と認定され、その援助分が生活保護費から差し引かれてしまいます。
結局、不足分は施設側がかぶる=未収金扱いとするしか方法がないことになります。
昨年、火災によって多数の入所者がなくなった群馬県内の「たまゆら」は、自己負担が低いことから、県外からも多数の人が入所していました。
自己負担が低いということは、安全面でも、施設面でも、人員体制の面でもリスク=危険がともなうということです。
「たまゆら」の場合は、入所者にたいする責任として経営責任が問われますが、根本にあるのは、介護保険と生活保護の制度上の矛盾という問題です。
こうした問題は、一刻も早く解決しなければなりません。
そのためには、まず特養を思いきって増設・増床し、入所待機者を解消する。
そしてグループホームなど、そこしか居場所がない人たちの入所費用の全額を生活保護費で払えるようにしたうえで、生活費も保障することが切実に求められています。
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