太田市の芸術学校で指導や指揮を行っていた職員が不当処分されたのは2023年9月。間もなく3年になります。職員が24年9月に提訴した不当処分取り消し裁判は、8月28日に第12回公判(ウェブ)が行われました。
第13回公判(ウェブ)は10月9日です。
職員は兼業報酬の受け取りやバイオリン売却、パワハラ、セクハラ、勤務時間不足などを理由に23年9月に参事から課長に1階級降格され、翌10月から12月まで3カ月間の停職(無給)処分に。停職が解けた後は芸術学校とは無関係の部署に異動させられました。
その後の市公平委員会ではバイオリン売却、セクハラは非違性なしと裁決されましたが、降格されたまま26年4月に定年延長で管理職ではなくなり部署は今もそのままです。
今回も裁判を支えるスタッフや応援するみなさんの声、寄せられたコメント(要旨)の一部を紹介します。


第1 不当処分された職員の地位について
1 はじめに
市は不当処分された職員が「主幹」に任じられたのは2017(平成29)年4月1日が初めてと主張し、「市長の特命を受けて動く特殊な立場」と主張するのは失当(※)と否定している。
しかし、「主幹」の職名はその日からであっても、不当処分された職員の特殊な立場は、主幹の肩書の有無にかかわらず、それ以前から前市長に各種演奏会の相談をし、指示を受け続けていた事実があることや、主幹となってからは、規定上でもその特殊性が位置づけられているため、こちらの主張が左右されるものではない。
2 前市長による個別具体的な関与という実質的側面について
不当処分された職員が芸術監督として行ってきた「ふれあい音楽鑑賞会」、「山本禮子バレエ団との共演」、「おおたアカデミーオーケストラ定期演奏会」等、いずれも実施の可否から予算(出演料)、演目や構成、ポスターの図案に至るまで、前市長へ報告・相談を経て、その指示を受けながら行われてきたものである。 このような実態は、不当処分された職員が主幹という肩書となる以前から一貫してあったものであり、不当処分された職員の地位の特殊性は、職名で左右されるものではなく、前市長が現実に不当処分された職員の活動内容を把握した上で関与し続けてきたという事実関係に求められるべきものである。
第2 兼業報酬を受領することとなった経緯について
1 市の「給与二重支給」論について
市は、不当処分された職員が芸術学校専任の市職員である以上、別途報酬を受領することは「給与二重支給」で、兼業許可を得ない限り地方公務員法等に違反すると単純に主張している。
そこで、このような給与の相違を補うべく編み出されたのが、不当処分された職員が指揮・指導による報酬を得る取扱いであった。そして、これは、不当処分された職員が自ら求めて考案した手段ではなく、市自身が不当処分された職員を市に招聘し、かつ、これを慰留するに当たって、市の給与体系の制度的な限界を補完するために編み出した工夫にほかならない。
したがって、これを指して「給与二重支給」と評価することは、その実態を正しく理解していないものであり、これこそ失当(※)である。
※失当=適当でないこと。
二重支給とは、本来一つの労務提供に対して二重に対価が支払われる状態を指すところ、本件における報酬の実質は、市自身の給与制度の構造的な欠陥(県教員から市職員への転籍に伴う給与体系及び俸給の伸び率の相違)を補填するために、市自身が容認し、構築してきた枠組みの結果なのである。
【解説】業務外での兼業
2 信頼保護・禁反言(前言撤回の禁止)について
さらに、以下の事情に照らせば、市が不当処分された職員に対し兼業届等の不提出を理由として重い処分を科すことは、信義則に反し許されないというべきである。
それらに照らせば、不当処分された職員としては市が構築し、かつ、長期間にわたり是正することのなかったこの取扱いについて、その適法性を信頼する正当な理由があったというべきである。
このような事情の下で、市が大きく関与してきたにもかかわらず、不当処分された職員の懲戒処分・分限処分という重大な不利益処分によってのみ清算することは、禁反言の法理(前言撤回の禁止)及び信義誠実の原則に照らし、許されないというべきである。
事務引き継書の存在
それらの証明は関係者の供述にとどまらず、市が業務で作成したマニュアルによっても裏付けられている。
証拠として提出した「事務引継書」には、次のような記載がある。
この記載が示すところは重大である。それは不当処分された職員が市職員のため直接指導料の支払いができないという制約を「事務担当者間」で共有、支払いは「おおたアカデミーオーケストラの謝金」という別の会計費目で計上処理する方法が指示されている。
少なくとも2020(令和2)年の時点で、すでに確立した業務手順として後任者へ引き継がれていたのである。
このような処理方法は、不当処分された職員が考案し自らの利益のために画策したものでは全くなく、市組織の複数の事務担当者の手を経て確立されたものが、正式な引継文書として明文化・制度化されていたものにほかならない。
また、市は不当処分された職員への報酬支払いを「給与二重支給」であるかのように主張するが、事務引継書の記載に照らせば、これを市組織が長年にわたり運用し、後任者に正式に引き継いできた会計処理であったことは明らかであり、この処理方法の当否について、不当処分された職員個人にのみ重い懲戒処分で責任を負わせることは、著しく公平性を欠くものというべきである。
なお、おおたアカデミーオーケストラの代表者は、芸術学校講師を務める○○氏であり不当処分された職員ではない。委託契約の締結名義人も〇〇氏であり、不当処分された職員が決裁権者として自己に利益誘導できる立場だったとする市の主張も、この点においても前提を欠くものである。
【解説】事務引継書について
第3 平等原則違反について
1 市は、不当処分された職員以外で演奏・指導の対価を得ていた職員は、太田市行政管理公社の職員であって市職員ではなく、地方公務員法及び市の条例・規則の適用対象外なので、これらの職員と不当処分された職員を比較することが失当であると主張している。
2 しかし、こちらが指摘してきた比較対象は、これのみではない。
おおた芸術学校の管理係職員(市職員含む)が、私的団体のおおたアカデミーオーケストラの通帳管理及び出納事務(源泉徴収を含む。)を行っていたことにある。
3 市の反論には看過し難い論理の飛躍がある。
財団事務を兼務する旨の辞令は、あくまで「おおた芸術学校」の運営に関する事務に限られるはずで、おおたアカデミーオーケストラは、市がこれまで一貫して主張してきたとおり、「おおた芸術学校から独立した私的団体」である。
そのため、管理係職員が、私的団体であるおおたアカデミーオーケストラの通帳管理・出納事務という、財団事務ではない私的団体の内部事務にまで関与することが、はたして財団事務の兼務辞令のみで正当化されるのか、市の主張にはこの点についての説明が一切ない。
むしろ、市の論理に従うならば、私的団体であるおおたアカデミーオーケストラの内部事務(会計処理)に、職員が勤務時間内に関与することが兼業に該当する行為であり、これについて何の手続も取られてなかったことになる。
したがって、市の主張する「財団事務兼務の辞令があるから兼業届は不要」という説明は、管理係職員の通帳管理という私的団体の内部事務であることを踏まえない発言であり、むしろ市は不当処分された職員と同様の構造的な問題(兼業届未提出のまま私的団体の事務に関与)が放置されてきたことを裏付けるものであり、市においてはこのような事態が承認、黙認されていたことの証拠というべきである。
以上によれば、市や行政管理公社の職員である管理係職員を処分の対象としてこなかった市は、不当処分された職員のみを処分することの合理性を欠き、平等原則違反の主張は十分に成り立つものである。
これらの記載により、私的団体であるおおたアカデミーオーケストラの通帳及び印鑑の保管・管理が、職員の執務スペース内で、市の日常的な事務処理の一環として、公然と行われていたことが客観的に裏付けられる。
このような管理実態は、市の「兼務辞令に基づく正当な処理」という主張の枠を超えており、私的団体の内部事務が、組織的な業務手順として確立していたことを示すもので、不当処分された職員のみを取り出して処分することが公平性を欠くことの証拠である。
【解説】アカデミーオーケストラ
第4 バイオリン売却及び処分の均衡について
1 市は重大な非違行為(違法)と主張するが
市は、不当処分された職員が事務分掌上の権限を越えて指示をしたことが重大な非違行為(違法)であると主張し、また、太田市公平委員会の裁決は、非違行為性(違法性)そのものは否定しつつ、不当処分された職員の「管理職としての資質」に対する評価に言及している。
しかしながら、事務引継ぎ書には「その他」として次の記載がある。
この記載が示す事実は、まさに、本件で市がバイオリン売却について非難する行為そのものである。
以上によれば、バイオリン売却代金が長期間にわたり収納処理されないまま金庫内に現金で保管され続けていた事実は、不当処分された職員の適切性を欠く指示などによるものではなく、市の会計事務を所管する管理係で行われ、正式な引継文書にまで明記される事務慣行であった。
すなわち、集金された現金を正規の収納処理を経ないまま金庫内に保管し、必要に応じてこれを流用するというのは、会計取扱いの一環として行われたものにほかならない。
このことは、市が「不適正な事務処理」として問題視する行為が、実は市の組織内において会計事務を所管する職員らによって、複数年度にわたり公然と、かつ、正式に後任者へ引き継がれる形で運用されてきたことを意味する。
また、このような対応は、当時の管理係の体制からすれば事務課長、係長からの指示で担当職員が行っていたもので、証拠にある領収書の署名、押印欄がマスキングされているが、事務課長本人の自署、捺印をして発行されており、これを裏付ける一つである。
このような事務慣行を長年にわたり是正することのなかった芸術学校管理係の組織的な問題というべきで、これを不当処分された職員個人の非違行為として処断することは、その責任の所在を見誤るものであり許されない。
【解説】金庫内の現金 発見して騒いだMa
【解説】金庫内の現金 陰謀の証拠
この会話で大事な点が二つあります。
【解説】バイオリンの売却とは
2 太田市における直近の同種事案の処分結果は看過できない
市は、2026(令和8)年8月17日、生活保護受給者から預かった返還金38万円について収納処理を行わず放置していた社会支援課の男性職員に対し、減給10分の1(6カ月)の懲戒処分及び主任から主事への降格をし、上司らに対して訓告、厳重注意の処分を行うことを公表した。
この事案は、公金を収納処理せず1年近く怠り、後任者が気付くまで発覚しなかったというものである。
不当処分された職員に対する「バイオリン売却代金の金庫内保管」の指摘と極めて類似する事案でありながら、その処分は「減給10分の1(6カ月)」及び「主任から主事への降格」にとどまっている。
しかも、職員の上司である課長、係長が訓告、部長、副部長は厳重注意にとどまっている。それに対して不当処分された職員に科された「停職3カ月・課長降格」とは著しい隔たりがある。
【解説】出納員はTo参事(課長職)
3 公平委員会が非違行為性(違法行為性)を認定した事由
市公平委員会が不当処分された職員の非違行為性(違法行為性)を認定した事由は次の通り。
①兼業の承認を得る手続の懈怠(怠る)
②パワー・ハラスメント
③勤務態度不良
以上の3点であり、「バイオリン売却」及び「セクシャルハラスメント疑い」については、いずれも非違行為性が否定されている。
それにもかかわらず、不当処分された職員に対する処分結果が「停職3カ月・課長降格」という、直近の同種事案(現金の管理を巡る不適切な事務処理)における管理職職員への処分(訓告又は厳重注意)と比較しても著しく均衡を欠く重い内容となっていることは、市における裁量権の逸脱濫用の重要な事実である。
4 市は韓国出張の必要性に疑問があるとするが
市は不当処分された職員の韓国出張の必要性に疑問があるとしている。
しかしこれも、事務引継書で「4月初めてやること」の一覧には「出張起案」の一項目として、「韓国楽器買付け→6月 or7月」と明記されており、韓国出張が、特定の年度に限った便宜的なものではなく、芸術学校の年間業務として組織的に位置づけられ、後任者に引き継がれてきた定例業務であったことが客観的に裏付けられる。
第5 パワー・ハラスメントについて
【解説】正確な事実
パワー・ハラスメントについては、市がいつまでも処分の核心に置いているため、こちらも繰り返し反論せざるを得ないのですが、裁判では事実と正確な根拠による主張が求められているため、主張書面等は裁判所で公開されていることから、ここでも正確に事実を記載するものです。
1 総論
2 不当処分された職員の認識
〇生徒との適切な距離の保持
〇対外文書の正確性の確保
〇必要書類の期限遵守
〇勤務中の私語の抑制等
3 7本の録音データを精査 事実関係
7本の各録音データ内容を個別に精査したうえで、事実関係を具体的に述べる。
[1本目の録音データについて]
不当処分された職員が指導係の職員B、C、D、E及び職員Aを交えて、〇〇交流演奏会及びウィンドオーケストラの運営、指導係全体の今後の体制等について業務連絡を行っている場面である。
その内容は、演奏会準備の進捗確認、対外的な連絡窓口の一元化についての注意喚起、生徒とのSNS利用に関する指導方針の確認、指導係全体の今後の役割分担といった、いずれも業務上必要な事項に関するものであり、その口調も、終始、部下を諭し、あるいは励ますトーンが基調となっている。
市が指摘する「もう中学生じゃないんだから」等の発言も、その文脈に照らせば、感情的な人格攻撃ではなく、職員Aの態度面について自省を促す趣旨での言及にとどまるものであって、市の主張する「人格の尊厳を害する叱責」とは到底いえない。
この点からも、市が一括りにして「複数の職員の面前でのミスの列挙」、「人格の尊厳を害する叱責」であったと評価することが、これには当てはまらないことが明らかである。
[2本目の録音データについて]
(1)当時のY課長補佐及びTo参事(課長)から職員Aについて、「精神的に疲弊しており、担当業務を継続させることは困難である」との申し出があったことを受けて、不当処分された職員が、職員A及び同僚の職員Xと3人で、担当業務の引継ぎの要否とその方法について確認を行った場面である。
このやりとりの中で、不当処分された職員の発言のトーンが、時間の経過とともに強まっている部分があること、「お前」という二人称を用いた場面や同一の事項について複数回確認を重ねた部分があることは、事実として認めるものである。
(2)しかしながら、このやりとりの実質は、以下のとおりである。
To参事及びY課長補佐から「職員Aが業務継続困難な精神状態にある」との申し出を受けた不当処分された職員としては、直接の上司として、本人の意向を正確に確認しないまま担当業務を交代させることについて、慎重な判断を迫られる立場にあった。
そのため、不当処分された職員は、職員Aに対して、真に業務継続が困難な状況にあるのか、それとも他の事情(事務室配置の変更等への不満)が実質的な要因となっているのかを、繰り返し確認せざるを得なかったものである。
この点、同席していた職員Xも、「勝手にAさんの状態を、医者でも親でもないのに、まるで病んでるかのように判断して、仕事を代わってもらいましょうって勝手に決めちゃうんだよ」と発言しているとおり、職員X自身も、担当交代の判断が拙速に行われることについて疑問視しており、不当処分された職員が職員Aの意向を確認しようとしたこと自体には、相応の合理性があったというべきである。
(3)また、このやりとりの中で、令和4年7月2日の通知文(校長名の誤記)の配布に関する経緯について、その文書を差し替えた人物を明らかにするよう不当処分された職員が質問した場面があるが、これは、行政文書として外部(生徒や保護者)に配布される文書に誤りがあるまま起案が回付されたという、行政運営上看過し得ない事の原因究明が目的であり、業務上の必要性を欠くものではない。
[3本目の録音データについて]
(1)〇〇交流演奏会のしおり作成に際し、職員Aが宿泊先(○○温泉)への確認を怠ったまま独自の判断でスケジュール案を作成し、結果として現地の受入れ体制と齟齬が生じていたことが判明したことに対するやりとりである。
(2)こちらは、以下の点を率直に認める。
不当処分された職員が「まず俺の話を聞いたほうがいいよ」、「じゃあ遮るな」として、職員Aの発言を繰り返し制止し、また、職員Aの内心の態度について「そういう態度で接していたと思いますか」との質問を、その回答があるまで重ねて行っている部分がある。これは、指導を受ける職員Aにすれば、ある程度の心理的負担を伴うものであったことを否定するものではない。
このような手法は指導のあり方として、より丁寧な配慮を要した面があったことを率直に認めるものである。
(3)しかしながら、以下の点も看過されるべきではない。
〇このやりとりの発端は、演奏旅行のスケジュールに関する確認不足という、具体的かつ客観的な業務上のミスであって、これについて上司として原因を確認し、再発防止を図ることは、正当な業務上の指導の範囲内にある。
〇この録音データには、市が主張するような、机や棒状の物を叩く威嚇行動、あるいは直接的な人格否定の文言は一切ない。
〇不当処分された職員は職員Aに対して発言・反論の機会を与えている(「もし反論があるんだったら、今言っていいので」等)。一方的に発言を封じているものではない。
[4本目の録音データについて]
(1)合唱の当番中に、職員Aが担当外の同僚と私語をしていたことに関し、不当処分された職員が事実関係の自覚を確認する場面である。
(2)不当処分された職員が、職員Aの性格について「自分を構ってくれる人がいないとやっていけない人」であると言ったことは、事実として認める。この点は、業務上の指摘の域を超え、職員Aの人格の評価であって、指導の方法として、より一層の配慮を要した点を、率直に認めるものである。
(3)しかしながら、以下の点も看過されるべきではない。
〇これの発端は、当番の職務中に持ち場を離れて私語を続けていたという、具体的で客観的な勤務態度上の問題であり、上司として指摘するのは正当な業務上の指導範囲にある。
〇この録音データには、机や棒状の物を叩く威嚇的行動、あるいは怒号は一切含まれていない。
〇不当処分された職員の「来年度の勤務体制の見直し」の発言は、あくまで一般論としての業務運営上の説明であり、これをもって職員Aの退職を強要し、あるいは示唆する趣旨でされたものなどではない。
〇このやりとりの中でも、職員Aに対して認識を述べる機会を与えており、一方的に発言を封じているものではない。
[5本目の録音データについて]
(1)これは、前日(4本目)のやりとりを踏まえ、不当処分された職員が、勤務時間中の私語防止のための対応(管理係事務室への立入りのルール等)について、職員Aに提案・確認を行った場面である。
(2)不当処分された職員が前日、職員Aが「そういう性格なんです」と述べたことを受けて用いた「他人依存」との表現について、職員Aから複数回にわたり訂正を求められたが、これを直ちに撤回することなく、やりとりを続けたことは事実として認める。この点も、指導の方法として、より丁寧な配慮を要したことを認めるものである。
(3)しかしながら、以下の点も看過されるべきではない。
〇「他人依存」という表現は、不当処分された職員が一方的に作り出し押し付けたものではない。その端緒は、職員Aが前日「そういう性格なんです」と自認した発言にある。
〇不当処分された職員の発言も、「そういうふうに『他人に依存』しなくちゃいけないのか」という疑問形であって、一方的なレッテル貼りを企図したものとは評価し難い。
〇不当処分された職員が提案した「勤務時間中は自席で業務を行い、必要時には電話で管理係の職員に来てもらう」は、職員Aのみの不利益な取扱いではなく、他の職員にも等しく適用される前提での業務運営上の提案であり、その内容に不合理な点はない。
〇この録音データにも、机や棒状の物を叩く威嚇的行動や怒号は一切含まれておらず、職員Aの反論も、やりとりの最後まで一貫して許容されている。
【解説】指南役の存在
[6本目の録音データについて]
(1)配布物・楽譜等の前日までの準備という、指導係職員として当然求められる基本的な業務手順の確認をするやりとりである。
(2)これが長時間に及び、同一の指摘が繰り返される中で、職員Aが心理的に強い負担を感じていること、また、やりとりの中で、職員Aの私生活(交友関係)に関する言及があったことは、業務上の指導として必要な範囲を超えるものであり、この点は率直に認めるものである。
(3)ただし、この録音データの文書には「机を叩く音」と記載されている箇所が複数あるが、その音が、不当処分された職員が物を叩いたことによって生じたとの事実は否認する。
録音を文字化した文書自体、その音の発生源と原因を特定するものではなく、この文書のみで不当処分された職員による威嚇的行動と断定することは、証拠としての根拠を欠くものである。
【解説】机を叩く音について
職員Aは激高すると机を叩いたり足を踏み鳴らしたり、ノートに鉛筆を突き刺し引き裂いたりする行動が目撃されています。自分で録音していながら、抑えられなかったのかもしれません。また、指南役が叩いた音が必要と指南したかもしれません。画像の無い音声だけで不当処分された職員によると断定するなど、いかにもやらせ臭く、「パワハラチームY」が考えそうなことです。
(4)また、以下の点も付言する。
〇このやりとりの発端は、配布物・楽譜の前日準備という、音楽指導に携わる職員として基本的な業務ルールの確認であって、その業務上の必要性は明らかである。
〇不当処分された職員は、この中でも職員Aに長時間にわたり発言の機会を与えており、一方的な叱責に終始していない。
〇不当処分された職員が用いた「被害妄想」との表現も、その文脈に照らせば、職員Aの精神状態そのものを評価し、診断する趣旨でされたものではなく、特定の出来事について、職員Aの「受け止め方」に対する矢野氏の「意見の表明」にとどまるものである。
[7本目の録音データについて]
(1)ウィンドオーケストラの担当を勤務体系の「内にするか外とするか」を巡る、不当処分された職員と職員A間の「今までの合意内容」についての認識の齟齬に関するやりとりである。
(2)このやりとりには、不当処分された職員のみならず、同席していた同僚職員Xも、職員Aに対して「疑問を呈する発言」をしている場面がある。
このことからも、市が主張する、「不当処分された職員が優越的な地位を利用して一方的に職員Aを追及した」という構図は、これには当てはまらない。
(3)また、不当処分された職員が、職員Aの職場内での孤立の原因について、職員A自身の言動(上司に対する不満を他の職員に述べていたこと等)に起因すると指摘した部分があるが、これは、不当処分された職員が見聞きした事実関係による指摘であり、職員Aの人格を否定する趣旨でされたものではない。
(4)このやりとりの結果、職員Aが感情的になり、涙を流す場面が記録されているのは事実であるが、これをもって、不当処分された職員の言動が社会通念上、許容される指導の範囲を超えるものだとの評価はできない。
4 小括
以上のとおり、7本の各録音データのうち、1~6本目のやりとりについては、指導の方法として、より一層の配慮を要した部分があったことを率直に認めるものである。しかしながら、次の問題は看過できない。
①これらは、いずれも具体的で客観的な業務上の問題である。
〇担当業務の継続可否
〇行政文書の確認不足
〇当番中の長時間の私語
〇配布物や楽譜の準備不足
以上は、業務上の指導の必要性が認められることである。
②市が主張するような、机や棒状の物を叩く等の物理的な威嚇的行動については、これが不当処分された職員の行為によるものであるとの事は否認するものであり、録音文書の記載のみから不当処分された職員に帰することはできない。
③不当処分された職員は、いずれの場面においても、一方的な叱責に終始するのではなく、職員Aに発言・反論の機会を与えていることからも、上記のように、不当処分された職員の言動が社会通念上、許容される指導の範囲を超えて、周囲の職員に著しい精神的苦痛を与え、その人格や尊厳を害する言動と評価することは相当ではない。
仮に、これらのやりとりの一部に、指導方法として改善を要すべき点があったとしても、それは他の非違行為(兼業手続の懈怠、勤務態度不良)と安易に積み上げて「停職3カ月・課長降格」という重い処分の根拠とされるべきものではなく、あくまで軽微な指導上の課題にとどまるべきものである。
第6 勤務時間の不足について
1 「勤務時間中の洗車」について
市は、「太田市職員の勤務時間等により難いものの勤務時間等に関する規則」で、芸術学校の勤務形態においても午後5時15分は勤務時間に含まれると指摘し、不当処分された職員が同時刻にガソリンスタンドで洗車を行っていたことを勤務時間中の不適切な行為と主張する。
2 指摘しなければならないこと
不当処分された職員は、その規則上、午後5時15分が定められた勤務形態の勤務時間に含まれることは争わない。しかしながら、以下の点を指摘する。
(1)洗車行為の実質的な内容及び所要時間
不当処分された職員が行った行為は、フロントガラスに付着した鳥の糞を除去するための、ごく短時間(数分)の洗車行為である。これは、走行の安全性確保という観点からの応急的な対応であり、私的な目的による長時間の洗車・車内清掃とは全く異にする。
不当処分された職員の当日の勤務実態は、太田校及び新田校における合計8時間を優に超える実働時間を伴うものであり、その中のごく一部(数分)において、走行に支障を来す視界不良を解消する応急的な行為をもって、勤務態度全体を「不良」と評価することは、行為の性質と程度に照らして著しく均衡を欠くものである。
【解説】焼きそば
(2)処分理由としての位置づけ
太田市公平委員会の裁決においても、この点は「その他の行為」の「勤務態度不良」という位置づけであり、人事院の懲戒処分の指針でも「減給又は戒告相当」とされる程度にすぎない。
このように、軽微な非違行為として扱われるべきものが、他の「兼業手続の懈怠(怠る)、パワー・ハラスメント」と安易に積み上げられて、停職3カ月・課長降格という重い処分の実質的な根拠とされていることは、処分の相当性の観点から看過し得ないものである。
第7 処分の量定における裁量権の逸脱・濫用について
以上、第1から第6までにおいて、市が処分の理由として掲げる各事由について、その事実関係及び法的評価を個別に争ってきたが、仮にこれらの事由の一部について何らかの非違行為性が認められる余地があるとしても、なお、本件処分「停職3カ月・課長降格」は、以下の理由により、市の裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法というべきである。
1 非違行為性(違法性)が認定された事由の限定性と軽微性
太田市公平委員会の裁決において、最終的に非違行為性が認定された事由は次の通り。
①兼業の承認を得る手続の懈怠(怠る)
②パワー・ハラスメント
③勤務態度不良(洗車)
上記の3点で「バイオリン売却」と「セクシャルハラスメント疑い」については、いずれも非違行為が否定されている。
そして、人事院の懲戒処分の指針を基準とすれば、これらは、「減給又は戒告相当」ないし「停職、減給又は戒告相当」という、比較的軽微な量定に位置づけられている。
このうち、①兼業の承認を得る手続の懈怠については、市が構築し、20年以上にわたり是正することなく容認してきた取扱いである。
そして不当処分された職員を慰留する条件として維持・拡充してきた経緯があることに照らせば、不当処分された職員の帰責性は通常の兼業未許可事案に比して著しく低く、処分の量定上も最大限の減軽を要する事情というべきである。
2 先例の裏付けを欠く量定判断
市が前回書面で自認するとおり、市には本件と同種の「複数事由総合型」の懲戒処分の先例が存在せず、市が量定判断の参考としたという他市事例も、「パワー・ハラスメント」及び「兼業未許可」のみに関する事例であって、本件のような複数事由を総合した重い処分の先例ではない。
すなわち、本件の「停職3カ月・課長降格」という処分は、具体的な先例の裏付けを欠いたまま、抽象的な「総合考慮」及び「管理職としての職責の重さ」という評価のみによって導かれたものにほかならない。
3 同種事案の取扱いとの比較における著しい不均衡
太田市における直近の同種事案、「生活保護受給者からの預り金の収納処理放置事案」は、非違行為をした職員本人についてすら「減給10分の1(6カ月)及び降格」にとどまり、その上司であった職員に至っては「訓告」又は「厳重注意」という軽微な処分にとどまっている。
これに加えて、市職員である管理係職員が、私的団体であるおおたアカデミーオーケストラの通帳管理及び出納事務という、不当処分された職員と同質の構造的な問題(兼業届未提出のまま私的団体の事務に関与する運用)を伴う行為を行っていたにもかかわらず、市は当該職員を処分の対象としてこなかった。
これに対し本件では、非違行為性が限定的かつ軽微なものにとどまるにもかかわらず、不当処分された職員に「停職3カ月」という、上記の同種事案における本人への処分をも上回る重い懲戒処分及び「課長降格」という分限処分が科されている。
このように、直近の太田市役所内における同種同質の行為に対する取扱いとの比較でも、本件処分は著しい不均衡を来しているというべきである。
4 処分理由とされなかった事情の量定への実質的混入
なお、太田市公平委員会の裁決は、「バイオリン売却」及び「セクシャルハラスメント疑い」について非違行為性を否定しながらも、「管理職としての資質に欠けていた」だとか「地方公務員としての適格性が疑われる行動であった」との評価をし、処分が重いものでないと言っているにもかかわらず、処分の量定判断をする時には、実質的な「加重要素」として用いてしまっている。
非違行為として認定されなかった事情までを、処分の軽重を左右する判断に実質的に「取り込む」ことは、処分理由として掲げられた項目についてのみ「防御の機会」が与えられるという「適正手続の要請」に反するものであって、許されないというべきである。
5 軽微な事由の機械的な積み上げの不当性
非違行為性が認定された各事由は、いずれも人事院の懲戒処分の指針上、単体では「減給又は戒告相当」ないし「停職、減給又は戒告相当」という比較的軽微な量定類型に位置づけられるものにすぎない。
懲戒処分及び分限処分における量定は、あくまで非違行為の内容と程度、そしてこれによる被害の重大性に応じた比例原則に服するべきものであり、複数の非違行為があったとしても、各事由の軽重を離れて「機械的に合算」し、指針とした想定される量定の幅を大きく超える処分に導くことは、裁量権の行使として許されない。
本件において、市は、上記3点の非違行為(いずれも指針の「減給又は戒告相当」ないし「停職、減給又は戒告相当」)を前提としながら、これらを単純に積み上げることによって、指針で想定される量定の幅を大きく超える「停職3カ月・課長降格」という処分を導いている。
しかしながら、前記で述べた減軽事情(禁反言、処分理由とされなかった事情の混入)を踏まえれば、このような機械的な積み上げの手法自体が、比例原則に反し、社会通念上でも著しく妥当性を欠くものというべきである。
6 小括
以上のとおり本件における市の処分は、裁量権の範囲を逸脱し、これを濫用したものといわざるを得ない。
①非違行為性が認定された事由が限定的かつ軽微なものにとどまること。
②具体的な先例の裏付けを欠いたまま重い量定判断がされたこと。
③太田市における直近の同種事案との比較においても著しい不均衡が認められること。
④太田市公平委員会の裁決内容を前提とすると、処分理由とされなかった事情が量定に実質的に混入して本件処分が重いものでないと市が言い訳をしていること。
⑤非違行為性が認定された各事由を機械的に積み上げること自体が比例原則に反すること。
上記のいずれの観点からしても、本件の「停職3カ月・課長降格」という処分は、社会通念上著しく妥当性を欠き、市の裁量権の範囲を逸脱し、これを濫用したものといわざるを得ない。
よって、本件の処分は違法であり、取り消されるべきである。
以上が、こちら側が提出した主張であり、それに対する解説を入れたもので、今回の裁判報告といたします。
寄せられたコメント
前回の報告で、たくさんの方から意見が寄せられていますので、以下に報告させて頂きます。7月、8月中に寄せられたもので、市民の方、一般団体や付属団体の方、芸術学校で学ぶ子や保護者、市職員やOBの方のコメントもあります。
コメント① Y先生の正しかった行動が認められることを切に
コメント② はやく真実が証明されてほしい 音楽指導をしてほしい
コメント③ ジュネスのファンです…数年前とまるで別物
コメント④ ジュネスのコンサート…本科の発表会と変わらない印象
コメント⑤ いつ結審するのか、やきもきしているところでしょうね
コメント⑥ 市は何言ってんだろう
コメント⑦ 市は早く非を認めて、賠償と謝罪をするしかない
コメント⑧ 生徒や保護者から寄せられた意見
コメント⑨ セクハラ…確認もしないで処分するなんてあり得ません
コメント⑩ ジュネスのコンサート…以前はマナーが良かったのに
以上が7月から8月に寄せられたコメントです。毎回たくさんのコメントをありがとうございます。このブログを読まれたみなさん、芸術学校の関係者、市職員やOBのみなさんからのコメントをお待ちしています。
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