太田市の芸術学校で指導や指揮をしていた職員が受けた不当な処分の取り消しを求めて昨年9月に提訴した裁判は、第7回公判が11月14日にウェブで開かれました。第8回公判(ウェブ)は来年1月9日(金)午前11時からとされます。
職員は兼業報酬の受け取りやヴァイオリン売却、パワハラ、セクハラ、勤務時間不足などを理由に2023年9月、参事から課長に1階級降格され今もそのまま。23年10月から12月まで3カ月間の停職(無給)処分を受けました。
これまでも裁判を支えるスタッフから聞き取った内容を掲載してきましたが、今回もスタッフが話された内容(要旨)として反論や提出した証拠の解説とともに、関係者からの補足や個人としての意見、裁判を応援するみなさんのコメントの一部を紹介します。
芸術学校における特殊な位置付け
今回の第7回公判では、反論に先立ち処分された職員の芸術学校における特殊な位置付けが示されました。
処分された職員は、「主幹」の職名を付与され、一般事務とはっきり区別した専門分野の専門的指導が業務であったことを主張。「特命事項に関すること」として、処分された職員は市長の特命事項にあたるとされており、芸術学校での業務は市長の特別な許諾があったことなどを主張しました。
兼業報酬を受けるに至った経緯
処分された職員は市への入職時に、入職前の教諭の給料より下回らないことを市長、教育長より何度も確約されていました。しかし数年経つと教諭との給与格差が広がり始め、人事課に相談するたびにその場限りの是正がされるだけで、抜本的な是正は行われず、教諭との給与格差が広がり約束が守られない状況が続いていました。
そのため処分された職員は、市を退職して県職である教諭へ戻りたいと強く願い出ました。市は協議し、市長が処分された職員を芸術学校から去らせてはならないという判断を下しました。
当時のK企画部長とS副市長が対応案を検討することとなりました。
結果として、処分された職員のアカデミーオーケストラなど大人の団体での指揮・指導での報酬の受け取りを提案しました。本来は給与格差の是正が望ましかったのですが、処分された職員は市が提案した条件を受け入れました。
歴代の課長4~5名も確認し、兼業報酬の受け取り方や確定申告などを人事課から指示を受けていました。
処分された職員は人事課に書面での覚書や許可などを数回求めましたが、市長案件を理由に書面を交付されることはありませんでした。
報酬に関する補足説明
兼業報酬は当初、市長の指示で「太田市金券」で支払われましたが、同じく金券で報酬を支払っていたスポーツ学校に税務署の指導が入ったこともあり、A課長が人事課と相談し源泉徴収したうえで、現金で支払うよう指示が出ました。この時に確定申告もするよう指示が出ました。当初は金券をM主任(現在は他部局副部長)からの指示でN行管職員(現係長)が購入し、処分された職員に手渡していましたが、これをやめ現金の振り込みとなりました。
兼業申請が有名無実化していた
処分された職員は芸術学校の講師などで構成するアカデミーオーケストラの指揮者で演奏活動に参加し報酬を得ていましたが、そのアカデミーオーケストラは民間団体であり芸術学校の付属団体ではありません。
アカデミーオーケストラは独立した民間団体で、その運営はアカデミーオーケストラの構成員がするべきものです。しかし、そのアカデミーオーケストラの運営全般は芸術学校の職員が業務として行っていました。その実態は次の通りです。
〇アカデミーオーケストラの通帳を作って市(芸術学校)からの演奏委託料を振り込み収入としていました。
〇アカデミーオーケストラの通帳は芸術学校の管理課長の管理下にあり、その指示で資金管理を芸術学校の職員が行っていました。
〇そのため、処分された職員の兼業は、芸術学校の資金管理の範囲内で行っていたことになります。
〇処分された職員へは、芸術学校の職員が源泉徴収をしたうえで支払い業務を行っていました。
〇他の演奏者へも同様の方法で芸術学校の職員が支払い業務を行っていました。
重大な問題が浮上
処分された職員への兼業報酬の支払いは市の管理下にありましたが、次の重大な問題が浮上してきました。
〇アカデミーオーケストラは独立した民間団体であるため、その事務代行は兼業となる。
〇芸術学校の事務職員によるアカデミーオーケストラの運営作業全般に対して兼業申請がされたことはない。
導き出される重大問題と処分の不当性
前述の点から、さらに重大な問題と処分の不当性が浮き彫りになります。
〇芸術学校では他の職員も含めて、兼業届けを提出しない運用が常態化していた。
〇25年以上もの期間、歴代の芸術学校の職員延べ50人以上が兼業届けを出さずにいた。
〇処分された職員を兼業申請を怠った罪で処分したのなら、事務方の処分も同様にするべき。
〇もし処分が一昨年処分された職員一人だけなら恣意的な処分となる。
■これは法の平等原則に反し、市の裁量の範囲を逸脱している。
課長 「兼業報酬は受け取ってよいと思う」「アカオケ経理で税を払ってないことのほうが重大」
次のようなコメントが寄せられています。
〇処分された職員が処分の前年度、芸術学校のT管理課長へ兼業報酬の受け取りについて相談したら「注意されてないのだから受け取って良いと思う」とT課長が答えたと聞いています。
〇そしてT課長は、「それよりもアカオケ通帳の経理で税の支払いをしてないことの方が重大だ」と続け、金額まで語っていと聞いています。
〇だからT管理課長は、出納責任者としての自覚があったことになります。
〇そしてT課長は、兼業問題は人事課が心配する問題であり、事務方であるT課長は不適切経理の方が重大だと考えていたことになります。
〇市は芸術学校での職員の働き方を知っていながら、問題ありとするならば、なぜ指導を含む対応をしてこなかったのか。その責任の方が大きいと、市職員を含む多くの関係者が語っています。
デタラメをばらまいていたなら断罪してほしい
次のようなコメントも寄せられています。
「〇〇(処分された職員)が一人で通帳を持っていて、一人で銀行からおろして使っていた」と当時のM部長、I部長、M課長が職員らに言いふらしていたという話しを聞きました。自分も実際に聞いたという人から同じ話しを聞きましたが、「こんなデタラメをばらまいていたなら断罪してほしい」と怒っていました。私もそう思います。
ヴァイオリン売却の責任はない
処分された職員は芸術学校の芸術部門の企画・指導を事務分掌としていました。事務分掌とは、年度初めに市へ提出している公文書のことです。
〇芸術学校では、ヴァイオリン売却当時も処分当時も今も管理係と事業運営係が業務を分担しています。
〇金銭を扱う業務は管理係の担当であり、事業運営係の職員が処理することはありません。
〇処分された職員は事務分掌では指導の担当であり、金銭を扱う業務とは無縁です。
〇市は金銭を扱う管理係の責任者として職員が処分される前年度はT管理課長を配置していました。
■よって、ヴァイオリン売却に関する責任は処分された職員ではなくT課長にあります。
■長期間、ヴァイオリン売却代金とされた現金が金庫に放置されていた責任は、金銭出納責任者のT課長が負うものでです。
歴代の出納担当、責任者 会計処理されてない現金は「懸案事項」
次のようなコメントが寄せられています。
〇金銭出納など管理担当の責任者である当時のT課長は、歴代の管理係の出納担当や責任者が、会計処理されてない現金を「懸案事項」としていたと発言しています。このことからも、バイオリン売却代金とされた現金が会計処理されていなかったことは、管理係の大失態なのです。
〇自分らの責任である現金管理の不適切さを、どさくさに紛れて処分された職員の責任に押し付けた形としました。誰が考えたのか姑息としか言いようがありません。
M課長補佐(当時) 「金庫で見つけた」「公金横領の証拠」とM部長の元に駆け込み
思い違いと分かっても謝罪せず、現金管理の責任は処分された職員にあると言い出した
次のようなコメントが寄せられています。
〇この現金を「金庫で見つけた」と叫び、「これが〇〇(処分された職員)の公金横領の証拠だ」とM部長(当時)の元に駆け込んだ管理係のM課長補佐(当時)は、それが思い違いだと分かっても謝罪せず、一転して現金管理の責任は処分された職員にあると言い出したと聞いています。そんな軽いノリで人の人生を左右する言動をするなど許されません。
M課長補佐 「自分が課長となり命令があれば、いつでもオーケストラの指揮をする覚悟がある」と大見え → 課長になって一度も指揮はせず、指揮の外部委託で予算を浪費
次のようなコメントも寄せられています。
〇M課長補佐(当時)は、「自分が課長となり命令があれば、いつでもオーケストラの指揮をする覚悟がある」と大見えを切っていました。しかし課長になってから一度も指揮はせず、むしろ指揮を外部委託して予算を浪費し続けています。
〇普通に考えれば、カラオケの経験だけで指揮などできないと分かるものですが…これは笑い話ではなく実話です。そんなお粗末な見識で、処分のための証拠を作り出していたのです。
パワハラにはあたらない
「証拠」の録音データは隠し撮り
パワハラの「証拠」として市から提出された録音データは、会話の途中から始まっています。録音をしたのはパワハラ被害者としている本人であり、いわゆる隠し撮りでした。
「パワハラ」の真相は、雇用契約における重大な違反行為への指導
市が「パワハラ」としていることの真相は、雇用契約における重大な違反行為への指導でした。
〇雇用契約における重大な違反行為の内容が解雇に相当するため、相対的にみて厳しい指導が必要となりました。そのため、業務上の必要かつ相当な範囲内で行われた言動でした。
「証拠」の録音データ編集 カットされた音声が多く、「被害者」に不都合な発言が消された疑いが
市が「パワハラ」の「証拠」として提出した録音データは、カットされた音声が多くあり、市が「パワハラ被害者」としている職員に不都合な発言が消された疑いがあります。
〇市が入手した時の録音データは、すでに編集後のものでありオリジナル提出を拒んでいます。
〇録音データの最初の一本は「重大な命令違反」が進行中のものであり、編集(カット)前の録音データが必要です。〇録音データの最初の一本は編集だらけのようで、初め、中間、終了の部分が削除されています。
〇この録音現場には管理係のY課長補佐(当時)が同席しており、Y課長補佐に意見した部分が消えています。
■Y課長補佐に意見した部分は命令違反となる重要な部分でもあり、パワハラ問題に熱心なY課長補佐の指示による編集なのだろうかという疑念が生まれます。
■編集(カット)前のオリジナル録音データがないなら、当事者本人とY課長補佐(当時・現課長)に証言してもらうしかありません。
■証拠の捏造とは思いたくありませんが、何が起こったのか正直分かりません。
録音データ どれも指導の範囲内 むしろ雇用契約違反の裏付けとなる
〇最初の録音から一年間にわたり、複数の録音データが提出されましたが、内容はどれも指導の範囲内であり、むしろ勤務態度不良が露呈する雇用契約違反の裏付けとなる内容です。
〇「被害者」とされる本人がパワハラ証拠となる録音をしていた期間は、処分された職員も芸術学校に在籍しており、当然ですが雰囲気で感じるもの、小耳に挟むものやSNSでの発信情報、外部からの情報提供に触れる機会などにより、公判を進める中で情報の繋がりが見えてくるものもあります。
■総合すると以下の疑惑があります。
■パワハラについては「被害者」とされる本人の訴えよりも組織的につくり上げた疑念が当初よりありました。
■最初の録音時に、なぜパワハラの被害相談・届け・提訴をしなかったのか。
■パワハラをすぐに止めるのが、相談を受けた組織の緊急性に対する責務です。
■処分しようとした側は本人と相談していたようですが、一年も秘密裡に録音し続けていたのはなぜか。
■録音データの大半は、本人から処分された職員に話があると持ち掛けたもので、作為的で不自然すぎる。
■指示があったのか、「パワハラ」の「証拠」を意図的につくり出そうとした疑惑がどうしても残る。
「冤罪だと思います」「他の人も同じ疑問を持っています」
次のようなコメントが寄せられています。
〇このパワハラは冤罪だと思います。 私も酷いパワハラを受けてコンプライアンス担当に相談し対応していただきましたが、加害者が停職や減給になったとは聞いていません。他の人も同じ疑問を持っています。今回の処分は、太田市役所の他のパワハラと何が違うのですか。
「衝撃的」「処分し退職させるための暴走」「市は納得できる説明ができていない」
次のようなコメントも寄せられています。
〇まさか市役所が、「一人だけを陥れるようなことをする訳がない」と思っていましたが衝撃的です。パワハラも処分し退職させるための暴走ですね。裁判となり、市は出鱈目の証拠しか出していないことや内容が明るみになってきているのに、何ひとつ納得できる説明ができていないこと、そして、人を処分しておいて何の責任もとらないばかりか被害者ぶる人もいて許せないです。
組織的関与を疑わせる行為も
寄せられた複数の情報を整理すると、次のような疑念・疑惑が生じます。
〇録音を続けていた時期に組織的関与を疑わせる行為が見受けられた。
〇ある上司がコーヒー店で、パワハラ「被害者」とされる本人の大好物のメロン○○を何回もご馳走していました。ご褒美は一人だけであり、コンプライアンス上、あり得ない行為。
〇パワハラ相談の内容を代筆し、代読、送迎まで仕事で支えていた職員がいた。
〇録音データの編集には組織的関与の疑いがある。
〇パワハラ「被害者」とされる本人が録音データを全て提出したら役割終了となったらしく、その後、支えていた職員数人が「辞めちゃえ」と退職を促していた。
■そして本人は退職。
■「パワハラを止めることよりも証拠集めを優先していた結果」がこれであり、逆に解雇を止めようと最後まで熱心に指導していたのは、処分された職員一人だけだった。
■なんとも後味の悪い話ですが、登場人物も特定できているので、公判の中で争いがあれば証言してもらうことになります。
勤務時間に不足はない
芸術学校の変則勤務時間について、市はそのような勤務はあり得ないとの観点から、処分された職員の勤務に時間不足があると主張していますが、その主張に反論しました。
〇芸術学校の開設当初より、午前、午後、夜と3コマに分けての勤務体制としていた。
〇芸術学校の授業が平日夜と土曜日に固定されていたので実態に合わせていた。
〇芸術学校開設当初の職員によると、1998(平成10)年度事業計画で勤務体制のあり方が協議されていた。
〇1997(平成9)年度に文化振興事業団(当時)が職員課(当時)と相談して進めていたと局長(当時)が述べていた。
〇その就業規定は文化振興事業団(当時)が定め、現在の文化スポーツ振興財団の規定に引き継がれている。
〇処分された職員が2000(平成12)年度に芸術学校へ着任する前から「3コマ」の時差出勤があった。
〇処分された職員はその制度の仕組みに従っただけ。
〇監査委員会から勤務時間の不足を指摘されたことはなく、勤務時間の報告などでも指摘はない。
■そうした3コマ勤務体制という芸術学校の制度を否定したうえでの勤務時間不足を持ち出すことはあり得ない。
■仮に制度が不備というのなら、それは制度整備をしなかった市の不作為が原因となる。
■その責任を処分された職員に負わせるのは許されない。
■こうした3コマ勤務体制も市長(当時)の了解事項であったと当時の職員が述べている。
処分を先導した者の思い込みに端を発している
芸術学校開校時の話しなので、当時の関係者に聞くか、現在の就業規則に反映されているかが重要になります。今もその勤務体制が継続されているなら、これも長い歴史の中で認められてきたことであり、違うのであれば、ただちに芸術学校の勤務体制を変えなければなりません。
問題の核心は次の通りです。
〇この問題は他の処分案件(処分理由)同様に、処分を先導した者の思い込みに端を発している。
〇処分された職員が勝手に3コマ勤務制度をつくり、自由に時間を使っていたと決めつけていた。
■こうした思い込みによる暴走は「芸術監督手当問題」も同様だった。
■処分された職員には芸術監督手当が支給されていた。
■その芸術監督手当も処分された職員が勝手につくって受け取っていると決めつけていた。
■処分審査会で処分された職員を問い詰めていたが、文化スポーツ振興財団の要綱に芸術監督手当の規定が発見された。
■市は芸術監督手当が正当だと分かり、黙って追及を取り下げたが謝罪も説明もないまま。
■芸術監督手当は市が処分された職員へ提示した処遇で、S副市長とK企画部長(いずれも当時)が提案したもの。
■処分された職員は弁明でそれを述べたが、市は証拠がないと聞く耳を持たなかった。
■文化スポーツ振興財団の要綱の存在を確認もせず追及していたのは、事務方のあり得ない大失態。
処分をでっち上げた関係者が、何食わぬ顔をして市政に携わっているのは醜悪
次のようなコメントが寄せられています。
〇今までに伺っていたことの文書を理解しました。
以前、大河原化工機の事件で検察と警察が謝罪して再発防止策を発表していましたが、事件をでっち上げた関係者の処分について何ら説明していないのが気になりました。
謝って終わりになるわけもなく、きちんと犯した犯罪者に対する処罰をしなくてはなりません。
それが社会正義であり、有耶無耶にすればまた事件は起きますよね。
処分をでっち上げた関係者が、何食わぬ顔をして市政に携わっているのは醜悪であり、不健全な組織です。関係者処分の段階はすんなりいかないのでしょうね。
決着がつくまでお付き合いするのでしょうから、関係者は体調を崩されないようご自愛下さい。
総括 「証拠」の生い立ちには疑問符ばかり
兼業問題も過去の経緯をすべて無視して断罪に走り、ヴァイオリン売却は当初、公金横領と決めつけていました。パワハラは組織的な作為性が窺われ、勤務時間不足は部下に盗撮まで命じて給油現場を証拠としましたが、写真にある日時から混声合唱団の補講で芸術学校太田校から新田校に向かう途中での給油であると分かり、その主張が崩れてきています。
セクハラについては、かなり悪質な印象操作であるため、別に取り上げることも考えています。
「証拠」とされる写真の当事者に確認しましたが、セクハラなどありえないと強く否定しています。当事者に確認もしていない杜撰さで、思い込みよりもさらに悪質です。
これもニュースに流されたので、写真を提供した者(特定済)の責任が問われますし、調べもせずに証拠で使うと決めた者も同様です。これは刑事事件の範疇ですが、今回の争いの中でも事実関係として言及する可能性があります。
当時の文化スポーツ部が証拠のすべてを作成しましたが、その証拠の生い立ちには疑問符ばかりが立っていると感じています。
今後とも一つずつ丁寧に真実を明らかにしてまいります。
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