
309人が昇給ストップ
昇給ストップ 係長・係長代理は106人
16日の太田市議会最終日の本会議では、人勧準拠のための議案に質疑。総務省による自治体への〝定員適正化計画〟の押し付けによって55歳で昇給ストップとなる状況が20年近く続いていますが、太田市では53歳でも昇給ストップとなる職員がいる問題を明らかにしました。
2026年1月1日時点で昇給ストップとなる職員は55歳超で259人、55歳前は50人の合計309人が昇給ストップとされますが、係長・係長代理では定年後に再任用された専門官を除いて55歳超、55歳前を合わせて106人にものぼります(※画像参照)。
7年以上も昇給ストップのまま勤務
給料表の上限に達して昇給ストップとなる55歳前の職員の平均在職年数は21年3月(※画像参照=2026年1月1日時点)。とくに女性の係長代理でその傾向が目立ちます。こうした職員のうち係長代理は管理職ではないため、昇任がないと管理職手当もつきません。53歳で昇給ストップとなれば、昇任がなければ定年延長があるとはいえ、60歳まで7年間も昇給ストップのまま勤めることになります。その原因が等級別職務基準表(※画像参照)にあると指摘して是正を求めました。
※なお太田市での定年延長は、国家公務員と同様に一昨年から始まり、一昨年から5年間、2年ごとに定年の年齢を1歳ずつ引き上げることになっています。定年延長後は係長代理相当の給与となります。
市長
実質的な職務の変更がなければ「渡り」になる
職務表の見直しには慎重な対応が必要
市長は、「実質的な職務の変更がなければ「渡り」になると答弁。職務表の見直しには慎重な対応が必要と答えました。
「渡り」は本来、職員の果たす職責・職務を区分しきれない場合のもの
再質問では市長の「渡りになる」という答弁に明確に反論。「渡り」は本来、等級別職務基準表では職員が担っている実際の職務・職責を区分・規定しきれない場合に、その職員の担っている職務・職責に見合う給料を支払うために、給料が上がる等級に「渡らせる」ためのものだったと指摘しました。
総務省が20年近く前から「渡り」を問題視して、毎年全国調査を行い毎年調査結果を公表していることも指摘。そのため今では、本来の目的のための「渡り」を行っている自治体は見つけられない実情も示しました。
しかし実際には、職務基準表の等級が同じでも、係長代理や係長のままでも、勤続年数を重ねれば重ねるほど、おのずから職場で担う業務・職務は質的にも量的にも増えることになり、実際にそうやって職場で職責を果たしている職員が多いことも強調。55歳で、あるいは55歳前に昇給ストップとなっている係長代理、係長は、再任用の専門官を除いて100人を超えていながら。今の給料表や職務基準表では、そうした職員の努力・労苦に報いることができないと力説しました。
ボーナスでも是正できるではないか
さらに、職務基準表の見直しが難しいというなら、ボーナスのうち勤勉手当、つまり賞与の規定を変えて、今現在昇給ストップとなっている、あるいは昇給ストップとなる職員が果たしている職責・職務・労苦に報いて是正できると強調しました。
給与条例5条6項、等級別職務基準表の問題
給与条例5条5項の55歳で昇給ストップという規定も大問題ですが、5条6項の「職員の昇給は、その属する職務の級における最高の号給を超えて行なうことができない」という規定がさらに大問題です。
等級別職務基準表に照らすと、人事異動で係長代理が転出すると係長代理を転入させなければなりません。例えば、入れ替わりで係長代理より階級が下の主事が転入し、その係に配置されると、主事の職務は簡単な事務や資料作成なので、主事に係長代理が担当していた業務をそのまま行わせることはできません。 主任に行わせることもできません。まして非正規の会計年度職員に行わせるのは論外です。ところが実際には、係長代理の転出後に係長代理より下の階級の職員が配置されています。
職場で果たしている責任、経験を適正に評価する等級表の見直しを
質問では、前述の給与条例5条6項や等級別職務基準表の矛盾を指摘し是正を要求しました。
職務基準表の職務は勤務成績によって決めるとされながら、今は勤務成績が適正に評価されず職務基準表に、つまり給料に反映されていないことを強調。職場で果たしている責任、発揮し貢献している能力、実績や経験が豊富で貢献度が高いにも関わらず、定年の5年も前に昇給停止となりながらも、さらに職場に、つまり市民サービスの向上に貢献するため、質量ともに業務が増える職員の努力に応え、モチベーションの向上につながるように是正が必要と力説しました。
さらに、そうした是正を行ってこそ、市民サービスの担い手として頑張る職員の労苦に応えられて、それが市長の言うウェルビーイング(※)にもつながると重ねて求めました。
※ウェルビーイング=生きがいや人生の意義など将来にわたる持続的な幸福感(文科省)
公務員の賃上げは景気回復にも波及
質問ではまた、公務員の賃上げなど処遇改善は、民間労働者の賃上げにも波及し、国民の6割を占める労働者の賃上げは国民全体の購買力を高め、景気回復につながることを強調。すでに県も賃上げ支援金を使いやすく改善し、太田市も賃上げ支援金の上乗せを決めているとして、民間への賃上げ支援とセットで太田市の公務員を、正規も非正規も派遣も賃上げすることがトランプ関税対策にもなると強調しました。
市長 地方公務員法に基づき適切に運用
市長は、地方公務員法に基づき、民間企業の賃金や国家公務員も含めた、他の公務員との比較で決められた給与制度で、法を尊重し適切に運用していきたいと答えるのみでした。


