選ぶ:’09ぐんま衆院選
仕事解雇、家失い投票できず 群馬
毎日新聞 2009年8月28日 群馬版
6月28日(日)、太田市浜町天神公園で開かれたおおた派遣村(同実行委員会主催)に相談に訪れた男性(49)が、今度の総選挙では投票できないことが分かりました。
「仕事がないこの状況をなんとかしてほしい」――この男性の思いを報じる記事が、8月28日(金)付「毎日」群馬版に掲載されました。
おおた派遣村にかかわった1人として、複雑な思いをもってこの記事を読みました。
記事では、「『仕事がない状態をなんとかしてほしい』…それなのに、職と共に住所を転々とする間に住民票を失うなどして、投票に行けない人たちがいる…候補者たちは生活支援策を競い合うが、届かない1票を、政治はどう受け止めていくのだろうか」という記述があります。
私たちは、今回の総選挙で、この男性のように自らの思いを投票に託すことができない人たちの思い・願いもしっかりと受け止め、雇用と暮らしを守るためにがんばっています。
以下にその記事(全文)を掲載し、ご紹介します。
住民票削除され、届かない1票
「仕事がない状態をなんとかしてほしい」。急速に広がった派遣切りや雇い止めなどを受け、今回の衆院選では雇用状況の改善を求める声も強い。それなのに、職と共に住所を転々とする間に住民票を失うなどして、投票に行けない人たちがいる。選挙戦は最終盤。候補者たちは生活支援策を競い合うが、届かない1票を、政治はどう受け止めていくのだろうか。【塩田彩】
雇用改善求める声強いが…
太田市に住む男性(49)は昨年9月末、約1年半勤めた建設会社を解雇された。住んでいた寮の部屋も失い、同市内の公園で寝袋ひとつで冬を越した。太田派遣村の支援を受けてアパートを確保、今月20日に生活保護を受け始めた。
「今までは自分に関係のないことだと思っていた。でも、今回は投票に行けるなら必ず行く。仕事がないこの状況をなんとかしてほしい」。男性は25日、保護費から交通費を工面し、2年以上前に住民登録していた千葉県流山市に出向いた。その場で期日前投票を済ませるつもりだった。
しかし、男性の住民票はすでに削除され、選挙人名簿にも、男性の名前はなかった。現住所のある太田市に住民登録をし直しても、3カ月後以降に公示・告示された選挙にしか投票できないことが分かった。
男性は茨城県に生まれ、中学を卒業してすぐ地元の建設会社に勤めた。その後、関東の建設工事現場を、仕事と住む場所を求めて渡り歩く間に、行政も住所を把握できなくなり、住民票が削除されたらしい。
「今になれば、住民票を移しておけば良かったと思う。でも当時はそんな余裕はなかった」。男性はそう話す。短期契約を繰り返す雇用形態で、いつまで寮に住めるかも分からない。社会保険も雇用保険もかけられていなかった。
太田市選管によると、今回衆院選で、選挙人名簿に基づき送付した投票所入場券のうち、493通が受取人不明で送り返されてきた。「理由は千差万別だろうが、仕事を解雇され住居を失った人も含まれるだろう」と選管職員は話す。
太田派遣村代表の瀧口俊生さん(37)は「派遣村で生活保護申請をした人の多くは、保護を受けたくて受けたのではなく、明日生きるのも大変な状況で申請をした。そういった経験を通して生まれた政治への思いを託す貴重な1票は、何らかの施策で生かされるべきだ。選挙権は国民の最低限の権利として保障されるべきだと思う」と語る。
群馬労働局によると、昨年10月以降、県内で解雇や雇い止めにあった非正規労働者は、7月までに83事業所、4317人に及ぶ。その中で確認できただけでも526人が同時に住居を失っている。