渋沢ゆき子議員が太田市12月議会・本会議最終日の15日に、新田第一保育園、薮塚本町幼稚園を民営化する議案に対して行った反対討論(要旨)は次のとおりです。
議案第95号
【太田市立幼稚園設置条例の一部改正について】
議案第96号
【太田市立保育園設置条例の廃止について】
日本共産党の渋沢ゆきこです。
議案第95号、太田市立幼稚園設置条例の一部改正について、及び議案第96号、太田市立保育園設置条例の廃止について この2議案に反対の立場で討論させて頂きます。
まず、議案第95号ですが、本案は、現在市立の幼稚園として運営している4つの幼稚園のうち、藪塚本町幼稚園について、来年4月から学校法人を設置運営事業者として、公私連携型・幼保連携型認定子ども園に移行するため、幼稚園設置条例から削除しようとするものです。
要するに、公立幼稚園を1園廃止し、老朽化に伴い新しく建て直した園舎・施設、用地を民間法人に無償で貸し付けする形で民営化するためのものということです。
民営化する1番大きな目的は運営費の削減であるということが、この間の本会議での質問や委員会での質問によって明らかになりました。
さらにはそうやってコストを削減して浮かせた分で、ほかの子育て支援に活用できるのがメリットであるという旨の考えも示されました。
将来を担う子どもたちの教育・保育に公費を充実させ、職員の処遇を向上させ、ゆとりを持って子どもたちに接する事ができるようにして行くことが自治体の責任ではないのでしょうか。
コストを削減するために公立の幼稚園を民営化して行くことは、幼児の教育・保育に対する公的責任の後退といわざるを得ません。削減すべきところは、福祉の分野以外にあるのではないかと指摘いたします。
本案によって、子どもたちにとっては、今までなれ親しんだ先生が大幅に入れ替わってしまい、今後の幼児の教育・保育方針についても、今までと同じように継承されるかどうか不安が残ります。
また、親にとっては公立の場合と比較すると、民営化以降、新たに入園する子どもからは、現在の在園児の保護者と同じ所得でも、保育料が1万円以上も値上げとなってしまう子どもが生まれる可能性もあるという点も指摘しなければなりません。
藪塚本町幼稚園に勤務していた非正規の先生の今後については、できるだけ希望に添えるようにとは言うものの、新しい法人に継続雇用されたとしても今までの処遇が保障されるかどうかは確実とは言えません。
太田市の都合で公立園を廃止するのであれば、今まで勤務していた先生の雇用継続と処遇の改善を確保するのは太田市の責任ではないでしょうか。
国は新制度によって、保育や幼児教育の分野に市場原理を持ち込み、公的責任を後退させて営利企業が参入しやすいようにもくろみ、公立幼稚園から認定こども園に移行することで、市町村の財政負担が軽減されるよう誘導しています。
全国各地で幼稚園や保育園の民営化が進んでいる背景には、そういった要因がありますが、安易に本市もこの流れに乗ってはいけません。
子ども達の健やかな成長のためには、民間も含めて教育・保育サービスの質の向上と、そのための先生・職員の処遇改善がどうしても必要で、そのためには、公立の幼稚園・保育園が民間のモデルとなることが重要になります。
にもかかわらず、公立園を民営化で減らすのでは、民間の園のサービスの向上に逆行してしまいます。
以上の点から考えて、議案第95号については、経費削減を理由に公的責任の後退につながる市立藪塚本町幼稚園の民営化を実行するためのものであることを改めて指摘し、反対することを申し上げるものです。
続いて議案第96号、太田市立保育園設置条例の廃止についてですが、本案は、現在、市立保育園として運営している新田第一保育園を、今年できたばかりの、保育園を運営した実績も経験も何もない社会福祉法人に施設とともに譲渡し民営化するために、保育園設置条例を廃止するものです。
要するに、本市にたった1園しか残っていない公立保育園を廃止して民営化するためのものですが、その目的は、藪塚本町幼稚園の民営化と同様に経費の削減といえます。
園舎の大規模改修を行ったうえで、保育園を運営した経験のない、できたばかりの社会福祉法人に市立保育園を譲渡、つまり民営化するものであり、今の非正規の保育士の雇用が継続されるのかも、その処遇がどうなるのかも、不透明なままであり、保護者や保育士、子ども達の不安は計り知れません。
とりわけ藪塚本町幼稚園の民営化と決定的に違うのは、新田第一保育園は、幼稚園ではなく保育園であり、0歳児、1歳児、2歳児など3歳未満児を受け入れている保育園を民営化するのですから、なおさら重大だということです。
今まで慣れ親しんだ保育士の大半が変わってしまうだけで、子ども達にとっては気持ちが不安定になりやすいというのに、いままでの保育方針や生活環境、園全体の雰囲気が変わってしまうことを幼い子どもは身体全体で感じ様々な支障が出てくることも考えられます。
言葉に表せなくても、おなかが痛くなったり、泣いてばかりいたり、登園拒否になる園児がいないとも限りません。
どうして保育環境が変わるのか理解できないまま不安を抱えて必死で環境に慣れようとする子どもの心と、信頼関係を築いてきた子どもたちから離れなくてはならない保育士の気持ちがわかりますか。
市長はそんなには変わらないといいますが、幼い子どもの気持ち、環境が変わることで目に見えない我慢をしなければならない子どもの立場、そのダメージがもたらす心身への影響で、保護者の負担も重くなるのではないでしょうか。
市立保育園の果たす役割、本市の責任という点では、藪塚本町幼稚園とまったく同じことが言えます。
大事なことは、保育の質の向上であり、そのための保育士・職員の処遇の改善です。そして、民間園がそれらを実行するには、公立園、つまり市立保育園が指標となってきたということです。
市立園の保育の質をより高め、処遇を改善することが、民間保育園のお手本となり、太田市全体の保育の質を向上させる事につながるのではないでしょうか。
また、市立保育園があると言うことは、市の職員が直接保育の現場で子どもたちと接するということです。
そうすることで、現在の保育の状況や課題について、保育職の重要性、大変さを肌で感じ、自治体の責任で保育の質やサービスの向上を行っていかなくてはならないということを市へ伝える力が強まるのではないでしょうか。
新田第一保育園を民営化するということは、本市に公立保育園が全くなくなるということです。それは、保育の現場に市の職員が全くいなくなるということであり、自治体としての子育ての重要性、保育の大切さを軽視しているとしか思えません。大変大きな問題だと指摘いたします。
市長も数年前に自ら「公立保育園は1園は残す」と発言されたのであれば、そのことを実行していただきたいと思います。
今まで公立保育園を民営化してきて特に問題はないなどと言い切るのはやめて、太田市の保育を向上させるために最大の努力、市としての財政的支援は惜しまないと言っていただきたい。
経費削減のために民営化するなどという考え方は改めて頂きたいと指摘いたします。
先日、ある保育士に話を伺ったところ、民営化が進むことで保育士の職がさらにブラック化していき、長く務まらずに辞める人が多くなり、熟練した経験のある保育士が少なくなり、子供にとっても、保育士にとってもいいことはないということでした。
短期的に見ると大きくは変わらないように思えますが、さらに今後民営化の流れが進み、本市にも営利企業による保育園、認定こども園が参入してきた場合に、今頑張っている本市の民間保育園が営利企業の影響を受けて経営が大変になっていくということも考えられます。
そうならないように、国へ保育に対する公費負担の増額を求めていくと共に、本市としても現状の保育の基準、サービスの質を守り向上させ、保育士の処遇を改善するためには、やはり、どうしても市立の保育園は残さなければならないと考えます。
以上の点から、太田市にたった一つ残されている市立保育園である、新田第一保育園を民営化する、保育に対する本市の公的責任を後退させることにつながる議案第96号には、全産業平均より10万円以上も低い保育士の処遇の改善にも逆行するものであることも指摘して、反対の立場からの討論を終わります。
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