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9月25日の市議会最終日の本会議では、最低賃金の引き上げと中小企業支援策の充実を求める請願が、やはり日本共産党以外によって不採択とされました。
日本共産党の渋沢ゆきこ議員が行った、この請願を不採択とする市民経済委員長の報告に対する反対討論(大要)は次のとおりです。
日本共産党の渋沢ゆきこです。
請願第20号「最低賃金の改善と中小企業支援の拡充を求める意見書提出に関することについて」の請願を、不採択とする市民経済委員長の報告について、反対の立場から討論させて頂きます。
本請願は6月定例会に1度提出されたものですが、市民経済委員会での審査の中で、賃金改定の答申が8月に行われるということで、その結果を見てからにしようと言うことで継続審査となっていたものです。
そして8月11日に群馬地方最低賃金審議会は、最低賃金の改定決定について14円引き上げて721円にする答申を行いました。
2度目の審査となるこの9月定例会での委員会審査の中で、今回の答申で2桁の大幅な引き上げとなったと言うことで今回はこれでよいのではないかという意見や、最低賃金で実際に働いている人がどれくらいいるのか。
そういう具体的な資料がないと説得力がない等の意見が出され、採決の結果委員全員により不採択となりました。
ですが、今回の群馬県最低賃金1人721円の改定で大幅な値上げとなったということで、これ以上は求めないと言うことで良いのでしょうか。
この改定額では根本的な改善にはならない、という理由を述べさせて頂きます。
1点目として、物価上昇率を下回る引き上げでは、賃金の実質的な低下になるということです。
今年4月から消費税が3パーセント引き上げられ、物価も大幅に上昇しており特に生活必需品は大幅に値上がりしています。
とすれば、最低でも5パーセント以上の引き上げがなければ、実質的に昨年同等の生活水準を維持することはできません。
そのもとで、今回の改正額721円では、引き上げ率で1,98パーセントにすぎず、このままでは実質的に賃下げになってしまうことは明らかです。
2点目として、関東7都県で最低の改正額、改正率では、地域格差はさらに拡大するということです。
今回の改定状況できわめて明瞭なのは、関東7都県で1番低額にある群馬県が、引き上げ額、引き上げ率ともに昨年に続き1番低いということです。
これでは、地域間格差が拡大するのは当たり前です。
答申された改正額で見れば、近隣県との格差解消には、茨城県とは22円、栃木県とは26円、埼玉県とは95円の引き上げが必要となっています。
そして、月155時間年間1860時間働くとして、埼玉県とは月1万2555円、年収で15万660円、東京とでは月収で2万5885円、年収では31万620円もの収入差が生じてしまうのです。
若者がより高い賃金を求めて東京圏に流出していると危惧されもとで、関東で1番低額の群馬県では、地域間の賃金格差を解消する改正がどこよりも求められています。
3点目として、年収200万以下のワーキングプアをなくすにはほど遠い水準だということです。
今回の改定額721円で、厚生労働省が生活保護との比較の算定基準としている月173,8時間働いたとして約12万5千円、年間2085,6時間フルに働いて約150万円です。
しかし、月あたりの労働時間についての厚生労働省の算定基準は、正月も夏休みも祭日も休まない法定上限の月173,8時間であり、「毎月勤労統計調査」では月155時間前後で推移しているのが実態です。
月155時間とすれば、721円では約11万2千円、年間1860時間フルに働いて約134万円です。
所得税や社会保険料などが引かれると月額10万円に届かない状況は改正によっても変わりません。
今回の改定額では、健康を害するダブルワーク、トリプルワークや、結婚できない、子どもを生み育てられない、親の収入に頼らざるを得ず自立もできないなど、社会の基盤を揺るがす事態の解消にはほど遠いとい言わなくてはなりません。
4点めとして、今回の改定では「早期に800円、1000円をめざす」政労使合意の履行を困難にするということです。
2010年の「雇用戦略対話」で「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1000円を目指す」との政労使合意が行われてから、今年で4年が経過しました。
この政労使合意は、「2020年までの目標」として設定されたものであり、その履行に向けた計画的な引き上げが求められています。
しかし、14円の値上げ額では1000円までに20年を要することになります。
以上申し上げた点から、今回の賃金改定の答申内容では、まだまだ最低賃金の改善は必要であると考えます。
そして、その最低賃金を引き上げるためには、賃金の助成または、税や社会保険料の減免など、しっかりとした中小企業への支援が必要となります。
そのための中小企業支援は、アメリカでは5年間で8800億円の減税、フランスでは3年間で2兆2800億円の社会保険料の事業主負担分の軽減を行っています。
ですが、日本では中小企業支援としては年間約50億円にしかすぎません。
こういうところにこそ抜本的に予算をはかるべきではないでしょうか。
そうすれば、中小企業も賃金の引き上げが可能になると考えます。
ですので、中小企業への経営支援策を拡充しながら、最低賃金について、地域格差間を解消しつつ大幅に引き上げる必要があるという趣旨の本請願は、採択されるべきものであると私は考えます。
そして、最低賃金が大幅に引き上げられなければ、働く人の懐は冷え込み、購買力は落ち込み、内需の拡大にはつながらないということであり、経済の好循環などあり得ないということを、付け加えさせて頂きます。
よって、以上述べたことをもって、本請願を不採択とした市民経済委員長の報告に対する反対討論とさせて頂きます。
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