新セーフティネットを勧めて生活保護を認めない?-そんな不当は許されない!(1)

  雇用保険と生活保護の間をつなぐ新たなセーフティネットの制度が10月から本格的に実施されました。

  しかしこの制度には、いくつかの問題があります。

以前のブログにもUPしましたが、9月17日に東京都内で開催された「徹底検証!新たなセーフティネット―本当に使える制度にしよう!」とかかげた集会では、新セーフティネットのさまざまな問題点が指摘されています。

新セーフティネットで
生活保護が抑制されてはならない

 同集会を主催した「人間らしい労働と生活を求める連絡会議」の宇都宮健児弁護士は、「『派遣切り』などにあった人を救う手段が生活保護しかなく、日本の社会保障はあまりに貧困だった」と指摘。新たなセーフティーネットがようやく始まるが、このことで生活保護制度の利用が不当に抑制されてはならないし、使い勝手のいいものに充実させていくことが重要だとのべています。

新セーフティーネットの各制度は窓口がばらばらで、給付と貸付が複雑に入り交じり、生活保護との守備範囲も不明確です。

新セーフティーネットの実施は運動の成果ですが、条件のない恒久的な支援制度に改善しなければなりません。

生活保護を抑制するための新セーフティネットへの誘導につながりかねなかった事例(太田市の場合)

Tさん(50代・男性)

身体障害者手帳1級

  私が最初に相談を受けたのは9月14日。独身で、身体障害者手帳1級(心機能障害)を交付されています。

8年ほど前に約1年間、持病(心臓疾患)の治療・療養のため生活保護を受けていましたが、その後、主治医から「軽い仕事なら就労可能」とされ、生活保護は停止。以後は働きながら生活してきました。
今年1月、仕事中のケガが原因で退職。雇用保険も未加入。以降は仕事が見つかりませ
ん。

9月14日に市の生活保護窓口で相談したところ、受給が決まれば9年前までさかのぼって受給できる可能性もある障がい年金の受給資格があるため、まずはその受給手続きに必要な医師の診断書をもらうため受診。しかし、診断書が出るのは10日以上先。受給できるかどうかが分かるのは手続きから1ヵ月後。仮に受給できても、月5万7千円ほどの厚生障がい年金が支給されるのは手続きから3~4ヵ月後です。

私のいない間に
――生活保護より早いからと
新セーフティネットを勧める

10月からの新セーフティネットでTさんが使えるのは、住宅手当と貸付金。貸付金では、仮に障がい年金を受給できても返済のため生活が困難に。私が議会視察で太田市を離れているため、Tさんが1人で生活保護の窓口で相談したところ、「いま申請しても決定するのは1ヵ月後。すぐに支給される(新セーフティネットの)住宅手当と貸付金を申し込んだほうがよい」と市の担当者から言われました。

視察から帰った私はTさんとともに市の窓口を訪ね、住宅手当はともかく、貸付金では、仮に障がい年金を受給できても返済で生活が困難になるとして、生活保護が必要でその決定までは新セーフティネット以外の貸付金で対応することが必要と指摘しました

私は「生活保護のほうがあなたのためによい」と言いましたが、「生活保護より住宅手当や新しい貸付金のほうが早い」と再三にわたって市の担当者から言われたTさんは、新セーフティネットの住宅手当と貸付金を選びました。

最終的にTさん自身が決めたこととはいえ、市のこうした対応は、生活保護を抑制するための新セーフティネットへの誘導とも受け取れます。
今後も引き続き、強調してその点を指摘し続けなければなりません。

■新たなセーフティネット

 「派遣切り」などへの批判が強まるなか、麻生前内閣が住居を失った離職者への支援策として構築。職業訓練を受講する場合、月10万~12万円を給付する制度や、2年以内の離職者に生活保護の住宅扶助費と同額の「住宅手当」を給付する制度などを新設したほか、住宅入居費など「総合支援資金」の貸付、当面の生活費となる「臨時特例つなぎ資金」の貸付などを行います。しかし、条件付き、3年の期限付きなどさまざまな
問題点があります。

■関連:本ブログ記事

新たなセーフティネット
10月から本格実施
しかし問題もあり

※09年09月24日付「本ブログ記事」

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