不当な処分の取り消しを求めた職員の裁判スタッフから聞き取り

 不当な処分の取り消しと損害賠償を求めて昨年9月に太田市を提訴した職員の裁判は、今年1月10日からこれまで3回開かれています。

 原告の職員は太田市の芸術学校で指導や指揮をしていましたが、兼業での報酬の受け取りやヴァイオリンの売却、パワハラ、セクハラなどを理由に2023年10月に処分されました。処分は参事から課長に1階級の降格とされ今もそのまま。さらに23年10月から12月までは3カ月間の停職(無給)処分を受けました。

 6月12日に4回目を迎える裁判を前に、その裁判を支えるスタッフに取材し聞き取った概要をお伝えします。スタッフは個人的な意見として話されました。

目次

パワハラへの反論まるで演劇の脚本

 パワハラが処分理由の大きなウエイトを占めているため、パワハラに対する反論も大きなウエイトを占めると思う。

現場を見ていた人の公平な証言を得て進めたい

 処分を進めた側は、数人でチームを組み話を組み立てているようだ。こちらも専門家の意見を聞きながら、パワハラ被害者とされる人物を含め証言を得て正確に解析したい。

 パワハラ被害者とされる人物の問題なども裁判でさらすことにためらいはあるが、争いとなった以上は仕方ない。

パワハラが市のコンプライアンス担当に正式に受理され、マニュアル通り処理されたのか疑問

 パワハラ相談の一般的な流れは、職員が所属する組織の人事等のコンプライアンス担当へ相談し、両者の話を聞いてパワハラが認定されれば、加害者は市のコンプライアンス担当から指導があるはず。

 しかしパワハラに関する指導はなく、1年以上前の出来事の処分を先導した「チーム」が粛々と隠密に進めていた節がある。組織の担当が、被害者本人に直接聴き取った内容を示す証拠は、公平委員会へ提示できなかったとされる。パワハラ被害者とされる本人に、パワハラで訴え処分させる意思があったのかが疑わしいとの声もある。

 これらの点はコンプライアンスのシステムとして理解できないし、ISOの認証を取得しているのなら、そのマニュアルから大きく逸脱していると思える。

まるで演劇の脚本のように、とても計画的に見えるのが不自然。当事者とその上司など数人の関与が見えてくる。それがとても不自然な行動に見えるのは、一人だけの感想に留まらない。

 市側はパワハラが、「長時間」、「大勢の前で」などと市側は主張しているが、そのようなことはなく、作文によるかなりのこじつけが強いと感じられる。

 今後、関係者には法廷での証言を求めることになるだろうが、パワハラを受けたという本人にも出廷してもらうスタンスでいる。

 もしも作為性の強いものと分かれば、別の裁判での争いも視野に入れることになるだろう。これは当然で、他の処分項目にも言えるが、虚偽の作為性があれば、名誉棄損にとどまらず虚偽告訴罪にも該当し、重い刑事罰となる。

兼業報酬の受け取りへの反論-事務系の係長が通帳を保管していて、庶務担当職員が支払い計算し、上司の承認のもとに源泉徴収をして振り込んでいた

市側は「兼業申請がなかった」の一点張りだが

 市側は「兼業申請がなかった」の一点張りだが、市長施策としての了解事項であったはずが、それは「知らない」で通している。

報酬の支払いでは、兼業した事業の決裁や書類に指揮者としての報酬や名前が明記され、契約書も残っている。その書類には副市長が専決印を押している。

 支払いは芸術学校の職員が源泉徴収をして、役所の手続にのっとり業務として行っている。兼業申請の相談は何度もしていたが、その度に、なぜか書類に残すのを拒否したのは市側だった。

 当時の担当者の職名(課長など)や氏名をあげて、退職後であっても証言などで争うことになると思う。

一般の職員が聞いて、処分がおかしいと思う点が

 「人事課が確定申告の指導を(処分された職員に)していたなら、人事課は兼業で報酬を得ていたことを知っていたということだから、それではダメだ」との発言が、あちこちから聞こえてくる。承認書類があろうとなかろうと、市の常識として、これでは絶対に筋が通らない。

事務系の係長が通帳を保管していて、庶務担当職員が支払い計算し、上司の承認のもとに源泉徴収をして振り込んでいた

 処分を先導した職員が、他の職員に対して「処分された職員が一人で通帳を持っていて、一人でお金をおろして使っていた」と、かなりの人達に話をしていたという。それを聞いた職員は「それではダメだ」と処分に納得したという。

 これは、とんでもない虚偽で、芸術学校の職員に聞けば誰でも事実と違うと答えられる。事実は、事務系の係長が通帳を保管していて、庶務担当職員が支払い計算し、上司の承認のもとに源泉徴収をして振り込んでいたということ。

 前述の職員に、その話をしたら、驚愕し「話がまるで違う。(処分された職員が)一人でやっていたと聞いたから、それなら処分されても仕方がないとみんなが言った」と呆れていた。

 処分した市側は「支払いは組織の仕事としてやっていた」と説明すれば、処分の正当性がなくなると分かっていたのだと思う。だから、あえて嘘の説明をしていた。それは明白。

 組織的関与を充分知っている職員がばらまいた流言飛語は、それだけで犯罪。 

 裁判では、支払いをしていた職員らの職名、実名をあげて証言してもらい、事実を主張したい。

市側は今まで、前市長の発言や考えを極力出さないようにしてきたようで、前市長を矢面に出さない配慮があったのだと思う。

 市長が変わった今、市職員の気持ちに、どんな変化が生じるかを見たい。

ヴァイオリン売却への反論-金銭管理に関与してない 非違行為はなかった 公平委員会が判定

金銭管理に関与してない 非違行為はなかった 公平委員会が判定

 すでに当初の市側の主張が崩れてしまっている。

 市では、金銭管理の責任者は「出納員」で、これは研修などでも叩き込まれ定期的な検査も義務付けているので、職員らの中には「出納員」の責任の重さを疑う者は一人もいない。

 ところが、その出納員が処分されない不可解さに大きな闇と疑惑がある。

 処分された職員が、この問題について公平委員会で金銭管理に関与していないと判定され、非違行為はないと判断された時点で、すでに終わっている問題でもある。

 むしろ問題は、最初は「備品の横流し」と言い、次に「公金横領」と決めつけ、それがないと分かると「現金管理不備」となり、それも無理となったら「課長という管理職としての責任」と次々変節してきた。しかも肝心な出納員への処分がないなら、恣意的との見方が強くなってくるだろう。

 こうした著しく名誉を傷つける決めつけに対する責任は、単純な管理職の責任などより、はるかに大きい刑事事件クラスのもの。

 この「公金横領」という言葉は当初はさかんに使われ、大勢の前でそれを匂わす発言が市幹部らから、確かに発せられていた。

 市長はこの「公金横領」という言葉だけ聞かされ、処分審査委員会の開催を承認したのかも知れない。

 このように、情報を操作した人物がいるとすれば、悪質としか言いようがない。

セクハラへの反論-相手が否定

相手が否定

 セクハラは問題外と判断されたも同然。セクハラの被害者とされる本人が否定している。この問題も終りだが、市側は、誰かが噂を報告したので、それで処分したという訳の分からない理由を言っている。

 はっきりさせるため、その噂を報告した人物の証言が必要になると思っている。

勤務不良への反論-尾行して盗撮

尾行して盗撮

 この問題への具体的な反論は、[2023年10月に処分された職員の請求による第1回公開審理 処分された職員が意見表明/2025年04月16日/水野正己のブログ]をお読みください。

 以下が聞き取った内容です。

 勤務時間中に洗車をしている写真が証拠としてあった。処分された職員が芸術学校の太田校舎から新田校舎へ仕事で移動する時に、自家用車のガソリンが少ないことに気付き、給油と洗車(10分程度)をしたが、なんと処分された職員の後をつけて、その光景を後ろから「盗撮」した職員がいた。

 この尾行と盗撮は問題視されていないが、尾行して盗撮した職員も勤務時間中であり、それも勤務不良が疑われる。

 個人の判断なのだろうか、命令でやったのであれば、誰の命令なのか知りたい。

 一般の職員の目から見れば、自分の上司の後をつけ、盗撮した写真を処分するための証拠として提出したのだから、同義的にも許されない行為と映るだろう。過去の例から「上司を後ろから刺した人」として、けっして良い評判にはならないと思う。

 盗撮した職員が誰なのか、裁判で写真が公開されれば、誰が写したのか、皆が知りたいと思うだろう。

反論の総括-処分された職員の主張、重要な時に関わった人への確認が不十分

処分された職員の主張、重要な時に関わった人への確認が不十分

 処分された職員は処分審査委員会の前から、今の主張を個々の項目について述べてきた。

 実名を出さなくとも、当時の上司や人事の担当者との話など、そして市長の発言も含めて、とても具体的であり、ぶれることなく語ってきた。

 しかし市側は、処分された職員が主張した「重要な時に関わった人への確認」をほとんどしていないことが分かってきた。市側が確認したのは、現職で話の融通が利く仲間内の一人か二人程度だったようだ。

 当時の芸術学校職員やOBなどには、誰一人確認をしていなかった。そして、彼らの主張書面の中にも、「すでに退職しているから確認できない」との記述が見られる。

 彼らは、先輩たちにいろいろな理由で聞けないのだろうか。

 人一人を処分しておいて、それを報道機関にも流すのだから、未確認など絶対にあってはならない。

 処分審査委員会も、処分された職員が弁明で主張した中で述べた人物への確認は取らず、わずか20日くらいで処分を下している。

 公平委員会での審理でも、処分された職員が主張した職員やOBなどにしっかり確認した痕跡を見ることは出来ない。

 これまで3回の裁判でも、こちらの主張にほとんど「知らない」で返してきている。この期に及んでも処分された職員の主張を確認しようとしないのは、それ自体が無責任な犯罪だと思えてならない。

 普通は市が市民に対して不利益処分をする時は、徹底的に調査して言い分があれば聞いて、それも調査した上で決定するものである。

 処分された職員の主張に対して、パワハラを受けたとされる本人も含め、出納員や業務で支払い行為をしていた職員らの確認はもちろん、処分された職員の直属の部下であった指導係の職員や歴代の管理職、OBまで含めて誰に確認を取ったのか解明していきたいと思う。

 市や人事課は、処分された職員の主張をもっと尊重し、慎重に扱ってほしい。彼らが何を信じて公務員となり、何を守って仕事をしているのか、はなはだ疑問。とても職員としての資質があるとは思えない。

 今回の処分の誤りはそこから始まっており、誰かの個人的恨みから発して、組織を巻き込んだ暴走だと話す人もいる。怒ると何をするか分からない人がそこに存在するなら、それも不思議な行動ではないという。

 同様の感想を述べていた前市長側近の職員の発言も確認しており、誰かの「私怨、暴走」という話も、これからは正確に記録しておく必要があると思っている。

 以上が裁判を支えるスタッフから聞き取った概要です。

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役に立って、希望がもてて、楽しめるブログにしたいなぁ…と思いながら更新中です。

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